野郎共、お仕置きの時間だ

なんのこたぁないダメ強化人間LayeⅡ(らいつー)の独り語散るgdgd生活ブログ なまはげだって少子化で寂しいんよ。

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【Viol Viera】 #02

+WARNING+オリジナル小説+WARNING+

・本文は完全一次創作です
・苦手な方はスル―推奨

それでは、どうぞ
【Viol Viera】#2




いい月が出ていた。

一点の曇りもない金色の宝玉が、無差別にこの世界を照らしている。といってもそれ自体が光を放っているわけでなく、反射光に依存して「輝いているように見える」というだけの話なのだが。

それでも、月は美しい。
この世に跋扈する有象無象を境なく照らして、平等に光を分け与えていく。
たとえ―闇に塗れた私であっても、その慈愛は変わらない。
こうやって、月の光にあたっている間だけはあらゆる柵(しがらみ)から解放されるような気持ちになれる。

不思議なものだ。
今の技術では十二分に月まで行ける(といっても、月に到達したと言われるアポロの映像は風が無いのに旗がたなびいてているのだけれど)し、正確な距離も自転数も、何時何分に一番地球に近づくのかも、ここから見える幻想的な表面部もただの岩の凹凸でしかないことも明らかにされている。月にはウサギもカニも住んでいない。それなのに、ここから見えるあの球体は人々に力を与えてくれる。
満月の日には事故が多い。それは運の悪い何処かの誰かが、その魔に引き寄せられ目を奪われ、気が付いたら手元が狂っていたなんていう有り勝ちな噂が、実は真実に最も近い理由であるだろう。

確かに月には魔力がある。人々を魅了する美しさだけではない、魔も人も、あらゆる生命を気付かぬ内に引き付ける強力な魔力が。

「ま、それが何であれ・・・・・・使えるものは利用させてもらうわ」

条件は向こうも同じだ。いい月が出ていれば、悪意は更なる狂気にも駆られる。
凄惨な、増幅した力と力のぶつけ合いになるのは避けられない。
結局は早いか遅いかの違いだ。であれば被害が拡大する前―具体的には今夜中には仕留めて胸を撫で下ろしてから布団にくるまりたい。

動きやすいものに袖を通し、髪を整え得物担いで部屋を出る。髪は女の宝であり、魔女の生命線。これ以上に使いやすく強力な媒体も無い。
恐らくまたこの扉を開けるころには日は昇ってきているだろうか。面倒なことだ。
それでも、必ず帰ってくる。血塗れになろうが腕が飛ぼうが、これは確定事項。
死地に向かう者というのはいつの時代でも、それくらい楽観的でなければやっていけないのだろう。
「なぁに、飯時には帰ってくるさ」
こんな風に笑顔で嘘をついて今生の別れをするのが、普通の人間の様式美。










―【Viol Viera】―
―Witch of late riser―
―aberration hunting file#02―

[Witch and Harrier Broom]














「おや、白雪姫がお目醒めのようだぜ」
「そうか?私にはどちらかというと悪の妃に見える」

部屋に入るなり2人の男が不穏な会話を展開している。男というのはどうやら一度頭を吹き飛ばされないと軽口の絶えない生き物らしい。たまには強めに出てみるか、と部屋の隅にあった鉄パイプを思い切りぶん投げると、それは空を裂いて回転しながらガラサキに直撃した。
「っおっし!ヒット!ナイスキル!」
「!?おいカーラ、やりすぎだ!」

グシャ、と盛大に骨と鉄のぶちあたる不協和音。薙ぎ倒されるガラサキ。まるでマネキンのように抵抗もなしに崩れさる彼を見、慌てふためく警部。
だが、よく考えてみてほしい。ウィザード(男魔道士)が顔面に鉄パイプを喰らっただけで早々倒れる筈がないのだ。
異変は唐突に顕れた。
ゆっくりと崩れるガラサキの身体が急に朧になったと思えば次の瞬間には炸裂。
「小さな何か」に分裂して茶色と黒の入り混じる煙に化けると、羽音と視界を埋め尽くさんばかりの群像となって飛来。
巨大な蚊柱は再び警部の隣に集まると、徐々に輪郭を取り戻していく。霧散するころにはガラサキの細い身体が其処にしっかりと「在った」。

「どうやら鈍っていないようね」
「まったく、ひどい女だ。テストがてら殺しにかかるとは・・・・・・
お前の膂力だったらひと一人ぐらい余裕だろうが」

「・・・・・・お前らみていると俺の中で魔女がゲシュタルト崩壊を起こしそうなんだが」

東邦でいうところの「空蝉」といったところだろうか、契約によりムシノシラセと一体化しているガラサキは一部だけでなく、その全身を羽蟲化させることも可能だ。それによって相手の目を欺き、逃走や奇襲を謀れる。補佐に関してはこれほど厄介で、頼もしいタイプの魔道士もいない。
ただ、変化中は羽蟲の群は実体と同義になってしまうので、まとめて焼き払われたりすると危ない。あくまで回避手段・攻撃手段の一つであり、対応さえできれば不死身の魔法というわけではないのである。

私は彼の反応速度が健在なのを確かめ満足すると、部屋の小さなテーブルへと腰を下ろした。

「で、警部さんが此処にいるってことはもう調べがついたとみてよさそうね。
ブリーフィングと洒落込みましょうか」
「少々手間は掛かったがこれで間違いはなさそうだ。お前さんの読み通りなら、な」

そう小さく頷き、警部は一つのファイルを投げてよこした。ぱさとテーブルの上で広がった用紙はどうにもコピーらしく、所々が黒く曇っている。原本は余程状態が悪かったらしい。
「十年単位じゃキリがなかった」
「それじゃあ・・・・・・」
「大昔の話のようだ。この街がまだ小さかった頃・・・・・・そうだな。まだ王政とか騎士とかがあったころ、数字にしてざっと300年前。一人の鍛冶職人が、人々の記憶にその名を刻むことになる・・・・・・悪い意味で、だ」
「魔と技術が錯綜していた頃。どんな狂信者が現れてもおかしくはないわ」
資料に目を通す。どうやら刑事記録に残っていないことを悟ったシュナイダー警部は、
わざわざ過去の王国記録にまで探りを入れてくれたらしい。資料上部に王家の紋章が刻まれている。並みの権限では閲覧すら不可能なはずだ。

「ご苦労なことね。憶測だけで此処まで出来るなんて」
「ああ、それに関してなんだが・・・・・・俺が署の資料漁って見当たんなくて消沈してたらだな、お前さんとこの執事? コンチェルト家に代々使えてるっていってたから、多分執事で合っていると思う。その人が何の断りもなしに署に現れてな、『お困りのようでしたら力を貸しましょう』とか言ってきたんだ」

執事。そして唐突な出現。
この身に覚えのある二つの特徴に、脳裏に嫌な予感が迸る。
私は即座に、まるで反射のようにその容姿の詳細を訪ねていた。

「執事って・・・・・・もしかして凄い長い髭もじゃの、目が隠れてる爺さん?」
「お、やっぱりおまえさんのとこのか。いやな、そのジジイ、俺も最初は疑ったさ。
ところがどっこい、奴さん極秘事項で有るはずの捜査内容を網羅してやがったんだ。
んで、渋々案内されるまま署を出たら・・・・・・あろうことか王立図書館に誘導しやがった」

予感的中。ベルン爺のやつ、余計な真似を。
苛立ちと呆れの入り混じった良く分からない感情を心の奥底で泡立てながら、指先でテーブルを何度も小突く。私は頷きながら先を急かす。
「ほうほう・・・・・・それで?」
「王立図書館の一般が閲覧不可な資料室、問題の物はそこにあった。流石に百年二百年前の資料なんざ警察にあるわきゃねーよな。襤褸臭い羊皮紙を、俺は必死に読み漁ったぜ。
すっかり辺りが暗くなったころに図書館を出て、そこまで付き合ってくれた爺さんに礼を言おうと思って振り向いたら・・・・・・影も形もねぇ。後で署の番頭に聞いても、そんなジジイ来てねェってよ。なんだ、ありゃ・・・・・・?ホントに、人間か?」
相変わらず勘だけはいい人間だ。
人間か、と問われれば彼は十中八九化け物だろう。

―セバスチャン・ベルンハルト。コンチェルトに仕える執事で、同時に屈指の魔道士でもある。当然ながら、魔女一族を世話・警護する役目上魔女より弱くては話にならない。
この至極理にかなっていながら苛烈な条件下で彼は見事に「執事」として職務をまっとうしている。
当主に拾われた500年前は「一応」人間だったらしいが、今は見る影も無く中身は化け物そのもの、外見だけ辛うじてジジイといったところか。
警部の云う通り、彼には「空間」の概念が無い。
「空間」そのものが契約対象なのだから、何処から現れ何処に消えても不思議ではないのだ。まさに神出鬼没、鬼出電入。 何処からともなく駆け付けるその姿は執事の鏡といっても過言ではないが、慣れていないものにとっては迷惑以外の何者でもない。
そこまでは一部の、彼を知る常人から見た彼のあり方。彼の本質はもっとおぞましいところにある。
正確には「空間」と「建築」、「地」と「鉄」を司る「ゴーレム」が契約相手だ。
少し本気を出せば街全体、地表全体をその支配下における圧倒的な魔力と、それを行使可能なだけ強大な出力を有する「神の創造物」ゴーレムの最高のタッグ。
彼の魔道の前では高層ビルもあっという間に巨大召喚獣になりかわる。
そして、私はこれまで彼よりも強力な魔道士を見たことが無い。

「忘れた方がいいわよシュナイダー警部。あの爺さんは私よりも20倍は長生きしてるわ」
「・・・・・・マジか。本物の化け物だったわけか」

しかし、ベルン爺はなんのために出てきたのだろう。
小うるさくて世話っぽい性格なのは私も知っているが、いい加減子供ではないのだから職場にまで顔を突っ込むのはやめてほしい。
それとも、何か故あって出てきたのであれば・・・・・・追って沙汰が来るはずだ。
例えば、魔界に関わるような何かが。
私としては、正直実家とは関わりたくないのが本音だが。

「にしてもよ、カーラ。もしかして、お前さん実はすごい名家の令嬢だったりするのか?
執事なんてよ、普通の家じゃつかねェよ。顔パス一発で王立の資料を閲覧できるなんてのも有り得ねぇ」

「何度も言うけど、余計な詮索は死期を早めるだけよ警部さん。
せっかく拾った命、大事になさいな」

「ですよねー・・・・・・」


さて、再度資料に目を通す。
300年前の鍛冶師。歴史の表舞台に出ないその記憶を。
警部は既に内容を完全把握しているらしく―相当読みふけったのだろう、丁寧に語り始めた。
「正確な本名ははっきりしていない。記述からはただ【ノスフェラトゥ・ブラックスミス】と」
「【不死身の鍛冶屋】・・・・・・ね。そしてノスフェラトゥにはもう一つ意味がある」
「そ、【吸血鬼】だ」
またポケットから煙草を取り出し、コンビニで手に入れただろう急拵えの、安価なライターで火を付けて語りを続けた。

「自分でつけたんだか、そう呼ばれていたのかは定かではない。ただ、このノスフェラトゥは、生前は人間であったらしい。両親ともにまっとうな人間体、魔界との交流はゼロ。
ただ、代々長男が鍛冶屋を継いでいくのがこの一家の仕来たりであり、ノスフェラトゥの奴はそれを進んで継いだという」
「中世らしい話だな」
「ただ鍛冶が好きなら、それでいいんだ。話は此処からだ・・・・・・
このノスフェラトゥ、鍛冶の方の才能はかなりのもんだったらしい。当時の王家も自分たちの刀剣を一任させたくらいだ、若いながらにかなりの腕前だったんだろうな」

そう、ここまではよくある天才鍛冶屋の話。しかし、時代は刃物を求めてはいなかった。

「丁度このころ、『銃』が本格的にこっちの大陸に普及し始めた。戦場は戦士たちの白兵戦ではなく、安全で確実な銃撃戦へと移行していった。
閉鎖主義であり、軍事面で圧倒的に行き遅れていた当時のここにあった国―アステリアは大きく隣国に揺さぶられることになる。誇りと騎士道だけでやっていけるほど、この時代は甘さを残さなくなった」

「人間って不便よねー・・・・・・あんなおもちゃで戦局が変わっちゃうんだから」
「おまえさんと一般人類を同系列に考えるな。魔女はチート級戦略兵器だアホウ」
「・・・・・・まぁ、私もこの力を手に入れてからは人間の脆さを思い知ったよ」
「ガラサキ、てめぇもそっち側かよ・・・・・・」

魔道士と魔女がいる部屋に、その中でひとり事情を知る普通の人間。確かに寂しいのは仕方ない。意見が同意を得られないのもわけはないのだが、シュナイダー警部は煙を吹かして誤魔化すほかなかった。

「隣国―ベリアリス相手に銃器なしで相手取るのは不可能と判断した当時の国王は、鍛冶場を全面銃器工場に仕立て上げることを発表した」
「まぁ当然の判断ね」
「そして、ノスフェラトゥは黙っていなかった、と」
ガラサキの一言に、警部は同意の色を見せた。

「このときノスフェラトゥは既に刃物に『取り憑かれていた』とみていい。―刀剣こそが人類の力の象徴。美しさと強さを併せ持つ、最高の芸術だと―・・・・・・そう確信してやまなかった。
そして、王に進言したわけだ。自分の鍛冶場をあのような無粋なものを作るために侵さないでください、とな」

鍛冶師なら少なくはない、「刃に魅せられたもの」。業物に美しさを見出し、彼らのために全力を尽くせる職人たち。職人としてはそれは素晴らしい姿勢かもしれないが、彼は刃に恋する余り―盲目だった。
「戦場の機微を読めない鍛冶職人に必要性を見いだせなかった王は、進言を撤回。
ノスフェラトゥを追い出し鍛冶場を工場に変えた。
追い出されたノスフェラトゥは、『刀剣こそが最も優れた武器であることを証明します』とだけ嘯いて、数日後には姿を消したという・・・・・・」
「嫌な予感がするな」

結果は分かりきっている。「何らかの時点で」契機があって彼は悪魔に魂を売り渡し、或いは自身をも魔が蝕んだ。見放された職人に付き物の反逆―それだけで済みそうにもないことは、現状から察して余りある。

「警部さん、知ってる?魔女や魔道士以外で悪魔にもっとも近い人間ってのはね、第一に死地に近い人間。その次は・・・・・・職人よ」

死地に近い人間。
つまりは、戦場を渡り歩く戦士、兵士―これらは、現代でもふとした拍子に悪魔に目をつけられやすい。死に際に死神がお迎えに来て、見事契約を果たして戦線復帰―文字通り鬼神の如き戦果をあげるなんてのは、電子とミサイル、情報と威圧の戦争になった今も変わらない。 それだけ戦場の魂は好戦的であり、意志が強く、彼らには魅力的なものだ。

第二の職人。これは少々分かりづらいが―詩人や刀鍛冶、画家の契約なら少数でも人間にみられる。 己が熱中するものに文字通り魂を奪われ、引き換えに莫大な才能を得るもの―そして、才能の果てに契約を忘れ、ある日に自分の脳天に銃口を構えている。
実しやかに噂話は流れ、何れ都市伝説と化す。此処でなくとも、よくある話には違いない。

「警部さんも、あんまり事件ばっかり追ってっと死神にツバ付けられちゃうから気をつけてね」
「嫁も子供もいる。そこまで熱中しとらんさ」

警部は煙で輪っかを作り、空中に放り投げると話を続けた。
「詳細は分からないが、何処ぞの古戦場・・・・・・如何にも死神様がウロウロしてそうなところで、てめぇの傑作を餌に何らかの悪魔を釣り上げた、ってとこだろ」
「今日は冴えてるな警部、どうやらあんた、ビンゴのようだ」

ガラサキが、静かに告げる。
「・・・・・・網にかかったか!?」
「まだ完全に姿を現すには時間がかかりそうだがな、依代(よりしろ)の方は既に上がってるらしい。随分とバカでかい鎧だな・・・・・・カーラ、こいつは・・・・・・」

探査隊を出しているガラサキの六感に、何かが映ったのか。意識を集中させ、蟲たちを飛ばしている様子だ。暫く目をつぶっていると、此方に宣告が飛んできた。

「解析結果出たぞ。【首なし騎士】、だ」
「デュラハーンね。厄介な相手だこと」
「首なし・・・・・・騎士?童話のアレか」
「そう。不吉の兆し、死の黙示」
北に伝わる首なし騎士の言い伝え。
近いうちに死人の出る家々を回り、血の入った盥を投げつける悪霊の伝説。
本来妖精の一種であったが、人間霊―それも執念深い騎士が増えることにより徐々にそれは、死の予兆から確固たる死を刈るものへと変遷して往く。

女の妖精であったそれも、いつからか首なし騎士そのものが大部分を占めるようになった。
言うなれば、死神だけで手が足りなくなった分の派遣業だ。

彼らは非常に残忍で、それでいながらも誇り高い。
興を重んじ、死にながらに騎士道を愛する。非力な一般民衆には悪戯程度で済ます寛大な死神でもある。
それが一般民衆を殺したのなら、それも300年前の個体ならば時代錯誤にも程がある。何か意味があるはずだ。

嫌な風が、開けっぱなしの窓から囁いてきた。

・・・・・・私の勘が嫌な方向に働くのならば、犠牲は今夜にも出る。動くならば今でなければ、間に合わない。場所が分かったのであれば事は一刻を争う。
「警部さん、お話は道中で聴くわ」
「おし、下に俺の車を止めてある、すぐに支度し―」
「や、こっちの方が早い」
車のキーを握りしめ今にも駆けだしそうな警部をあっさり放置して、
壁に向けて手のひらを翻す。

空中をひとりでに飛んできたのは、古ぼけたホウキ。電力を喰らってフルパワーで稼働する掃除機にその座を奪われた、うらぶれたただの木の棒。
普段は部屋の片隅に鎮座しているそれが、元気よく飛び出してきて窓辺の縁へと停止した。いい子だ。

「お!?」
「んじゃ、お先に」
ばっと窓から飛び出し、両足でしっかり宙に浮かぶホウキの柄に立つ。
よく絵本の挿絵にあるような、股の間に挟むなんて今時恥ずかしくてやっていられない。
それに今は先を急いでいる。こうやって立ち乗りした方が速度は出やすい。

「さ、いくよ!部屋の隅で立てかけられてるだけでも退屈でしょう」
魔力を吸って自由に動けるようになったホウキは先頭を曲げ、大きく頷いた。

窓辺からホバーブースタを吹かしたハリアー戦闘機のように垂直離陸、旋回して頭を目標座標の方角へと向ける。同時に魔力を放って空気中に魔法陣の軌跡を描き出し、障壁展開。人間には感知されない「透明化」のプロテクト―いわばステルスの呪文である。

警部が阿呆な面を下げて、口を開きっぱなしにしている。私がホウキを使うのが余程革命的だったらしい。
「お、おおお!アイツが、ホウキに乗って飛ぶだなんて、なんて魔女らしいことを・・・・・・これは夢か!?」
「カーラ、正確な座標は此方でエスコートする。存分にフライトを楽しんで来い」
「聞いた?ホウキちゃん。思いっきりぶっ飛んでいいの。夜空に制限速度なんかないからね」
そっと、ホウキの耳元(恐らく先っぽのちょっと下あたりで良いのだろう)で囁く。

貴方は飛べる。誰よりも速く。年季の浅い掃除機やただお固いだけのデッキブラシとは違う、職人の魂と歴史が籠っているのだから。
思い出せ、飛び方を。数々の魔女たちが、その相棒がそうしたように。
この夜空は貴方のためのステージ。制空権も速度制限も無い、貴方だけの空。

それは、暗闇を祓うモノ。
それは、福を呼び込むモノ。
それは、空を切り裂くモノ。

それは、荒ぶる神の炎。

旋律の魔女の名において命ずる 今こそ仮初の姿を、凡庸の仮面を捨て、真の力を我が前に示せ。



魔力制限解放。出力増大。
結界変異、空力態勢へと移行。
アフターバーナー、フルスロットル。
箒先から、紫色の閃光が迸る。焼け付くように眩く、流星のようにきらびやかに。
待ちきれないとばかりに溢れだす光の渦。
我慢できない衝動ならば、いっそ解放してしまえばいい。


その奔流で、全てを焼き尽くして。
跡片もなく、彗星のように。




「OK,Dance with Me!!」



掛け声と共に、盛大な爆破。夜空に吹き飛んでいく紫紺の彗星。
木製ミサイル弾の噴出煙が、廃ビルの4階付近を木端微塵に吹き飛ばしたのだった。


立つ鳥、後を濁さず。されど魔女にその道理は通用せず。
爆心地付近の窓ガラスと赤煉瓦は以前の古典的ながら優雅だった様式の一切をブチ壊され、塵と灰と、取り残された男2人だけになっていた。



「・・・・・・派手にぶちまけていったな、あの魔女」
「あいつに魔女らしい発進を期待した俺が馬鹿だったよ」

アフターバーナーから綺麗な紫の尾煙を噴きだしながら、アクロバット。楽しそうに夜空を戦闘機動で滑空する魔女を見てシンデレラならぬ、灰かぶり男たち二人は語散る。

見事に吹き抜けとなった室内からは、がらんどうになった天井からは、万人に区分なくその輝きを提供する月がよく見えた。

To be continued [file#03]
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  1. 2010/04/12(月) 00:32:25|
  2. 一次創作
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Author:LayeⅡ
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塾講あがりが公務員になりました。

しゅみ
・飛行機模型
・へたくそなおらくがき

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