野郎共、お仕置きの時間だ

なんのこたぁないダメ強化人間LayeⅡ(らいつー)の独り語散るgdgd生活ブログ なまはげだって少子化で寂しいんよ。

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【Viol Viera】#11

+WARNING+オリジナル小説+WARNING+

・本文は完全一次創作です
・苦手な方はスル―推奨
・以前の話は右下カテゴリの一次創作より
それでは、どうぞ
【Viol Viera】#11

    












 日の当たらぬ路地を、息を切らせながら走る影が居た。
大きい影が二つ、小さい影が三つ。どうにも小さい方は小鬼の類らしく、発達し切っていない小柄を懸命に揺さぶって、大きい方の鈍重な悪魔を引っ張っている。
引っ張られた大柄の方は、豚の鼻を鳴らして体力の限界を伝えていた。視界の先にある、ほんの数メートルの一本道がこの上なく遠く感じられる。
先陣をひた走る小鬼が叫ぶ。もう少しで主の陣地だ。

「豚のおじちゃん、あの角を抜けたら防衛線だ!ザラキエル様に助けてもらえるよ!」
「…お前たちはさっさとお行き。おじさんはちと疲れちまっただよ」
「何言ってるんだよおじちゃん!」「おじちゃん置いてけないよ!」
「あっしは直ぐ追いつくです、さぁ」


とんと、小鬼の背を押した。小さき子らはその真意を汲み取ったのか、不安であったろうに振り向かずに駆けた。自分の背中には轟々と、地を抉る鋼鉄の箱が迫ってくる音が如実に聞こえる。……奴らの使っている兵器は、驚くことにどうにも魔界に通用するものらしい。先程逃げ遅れた際に足に少し貰ってしまったが、肉が根こそぎ吹っ飛んで、再生もままならない。
何より自慢の屋台が何の前触れもなく光と共に消し飛んでしまったときに、もう長生きは出来ぬとトーテツは薄々に実感していた。
だが、まだ年端もいかぬ鬼共は道連れにしたくはない。悪魔にも親心くらいはある。そんな彼は心底悔しそうにぼやく。

「人か……こんな忌々しい力を、いつの間に付けていたのやら。
ふん、あっしの鼻も随分と鈍ったもんだ」

鋼鉄の地響きが迫りくる。どぉんと耳を劈く轟音に、僅か後ろの密集した民家が粉微塵になって降り注ぐ。
万事休す、トーテツは死を覚悟した。

「年貢の納め時ってぇやつか……!」

砲塔が呻きを上げてトーテツの方を向き、無慈悲にその空洞を煌めかせ――今まさに現を生きる悪魔に死を与えんとした。
どぉん――虚空にただ、空と地を貫く爆音を奏でて、視界にある有象無象を引っぺがして無に帰して往く――しかし。
空白の数瞬、彼は信じがたいものを見た。

何かが飛び込んだ。トーテツは我が目を疑った。
一人の女が――戦車砲の射線と自分の間に滑り込むように割って入るではないか。
一秒間を細切れにした微細な隙にも関わらずそれはあまりにも淀みなく、スローモーションのような世界で彼女は仁王立ちし、黒いローブを翻し何か呪詛を唱えているようだった。
やがてそれは理解に要する間も与えられずに光に包まれ――あたりは煙に包まれた。



暫くし、攻撃に成功した侵攻部隊から、嫌な喜色と憎悪の熱狂に満ちた悲鳴があがる。
人間の、陰険な喜びだった。自分たちと異質のものを迫害した時の、負の一体感からくる背徳の狂喜。何千年たとうと決して消えることはない。

「やったか!?」
「目標弾着、誤差ほぼ零、対象の状態を確認中!」
「うはははは! 悪魔どもめ見たか、木端微塵よ! 二年前の大戦の、貴様らの愚行はどのような血が流れようと贖えぬ! そうだ、こんな雑魚の肉塊では……」
「誰が雑魚なんですかね」

――誰の声だ。
哄笑わけいる不審な声に戦車隊の誰もが、背に走る冷汗を覚えた。
バカな。確かに砲弾は直撃した。あんなものを喰らって生きている生物など、況してや悪魔すらも粉砕せしめる代物を。
煙が晴れ、モニター映像が修復され、画面には有り得ない輪郭が今だ其処に立ちふさがっていることに、隊員の一人が強張った声で報告をする。
一人の、それも小娘と形容できる華奢な存在が、弾着地点その位置に佇んでいた。炸裂時の噴煙を切り裂いて、何事もなかったかのように。

「……命中、但し目標未だ健在……信じられません!」
「そんなバカな事があってたまるか! 中級悪魔を一撃粉砕し得るアラミエド式対魔榴弾砲だぞ!? もう一射だ、装填開始!」
「主砲装填開始! 照準再確認、次砲で仕留めろ!」

再び武骨な鉄の箱が呻きをはじめ、路地の中央に佇む小娘にその大口を向けた。対して向けられた小娘は――何度やっても無駄だとばかりにやれやれと両手を振る。
それを唖然として見ている、庇われたトーテツは唐突に吼えた。決して人間に対する恐怖からではなかった。彼はもっと恐ろしいものに気づいてしまった。
爆風の余波で棚引くローブの裏に、そして僅かに覗く頬に。人の形をしたその生物に、あってはいけないはずの紋様があったからだ。
牙の如く逆立った、鱗のように刻み込まれた黒い痣。そのパターンは、とうにこの世界から居なくなったはずの種族のもの。そして何よりも――全ての生物が怯え竦むような、うら若い表情に似合わぬ覇者の双眸。
それを、人と魔は畏怖を込めてこう呼ぶ――龍神、と。

「あ、あんたまさか!? そんな、神様!
なんてこった! あんたらは……ああ! とっくのとうに滅んじまったはずだ!? 
し、しかもその顔は見覚えあると思ったら、ザラキエル様の側近か!?」

「……トーテツ如きの矮小な視野で世を測らぬことです。
おっさん、あんたら豚は確かに頭は切れるが、世の中には知らなくていいことも多かったり……するんですよ。おわかり?」

「や、滅相もねぇ! 龍神さまに守ってもらうなんて夢にも…」

「ではその口を噤んでみていなさいな。こいつらはきっちりオトシマエ取らせてもらいます。後はわたしに任せて」

「ははぁ!」

平伏し後ずさりするトーテツを尻目に、リーゼロッテは武骨な箱に向かって行った。そして、僅かな隙に思考を駆け廻らせた。
人間は…いつまで立っても変わらぬものだ。こんな鉄の塊を生み出し、鉄の矢を放つ器機を創造し、なお己が力の未熟さに気が付いていない。
奴らは、自分たちがこの世界で何でも思い通りに出来ると思いこんでいる。それは幻想だと、思い上がりだと、誰が気付かせられよう。
それは、今を生きる自分にしか出来ない。彼らは自分でそれを思い直す機会をとうに失ってしまった。
これも慢心と言えるだろうが、龍は慢心してはんぼだ。誇りのない龍などただの蜥蜴に過ぎぬ。
この戦いは、魔と人だけに委ねておくわけにはいかない。リーゼロッテは、久しくたぎっていた。
ロゼッタとの戦闘以来、随分と落ち着きがなさすぎだが、戦闘種族としてはこれくらいの方がいいだろう。
事実、それを楽しんでいる自分もいるのだから、全く度しがたい。
彼女は至って楽しそうに、ローブを翻して戦車へと向き直る。ぽきぽきと指を鳴らす。

「さて……ではまずどちらが"雑魚"なのかを教授してやるとしましょうかね……」

「隊長、奴が接近しようとしています!」
「構わん、第二射撃てい!」

どぉん、またも地と空を劈く鋼鉄の裂空音が響き渡る。
しかし今度ばかりは違った。
ばきと尋常ならざる音と共に、吐きだされた砲弾は娘の拳の前でその軌道を失い、弾き返されて脇の建造物にのめり込んだのだ。
炸裂もせず、醜く拉げたそれは、誰が見ても寸分の狂いもなく小娘の手によって行われたものに違いなかった。
娘が手を開く。ぱらぱらと、黒ずんだ粉と、煙を挙げる掌。
――砲弾が着弾するよりも早く素手で榴弾を貫き、その信管から起爆能力を奪う、こんな芸当が、はたして人にも魔にも出来ようか?
眼の前にただ伏せる現実を受けとめれずにいるのは、ただ人間のみであった。

「……なんですかあの餓鬼は」
「化け物だ、悪魔なんかの比じゃねぇ……俺まだ死にたくねぇよ……!」
「ええい、うろたえるな! 奴とて生物、いつかは――」

「――そう、いつかは滅びる。だからお前たちは静かにただ灰になっていればよかったのに。
鉛の矢を放てるから? 鉄の車や鳥をはべらせられるから? 大地を一瞬で焦土に変える劫火を持っているから?
世界を統べるのは最早人の仕事だと? はっ、笑わせてくれます。役者不足なんですよ!
お前たちは何も変わっていない。いや、むしろ退化したと言っていい。剣戟でわたしに楯ついていた頃の人の目にはまだ焔があった。
今のお前たちは――ただの木偶です。科学の齎す叡智に溺れ己が力を忘れたお前たちに、今を生きる資格などない。況してや命を奪う資格すらも。
己が生み出した業の傀儡に成り果てた愚かなお前たちには――相応しい"消滅"をくれてやりましょう」


てのひらを伸ばす。久方ぶりに得た実体に、黒い奔流が烈火の如く流れ狂う。
懐かしい感覚だ。あの頃の人は、未だ弓と剣と、ただのそれだけを携えて果敢にもリーゼロッテに立ちふさがっていた。
今はどうだろうか。鋼鉄の箱に籠り、電子越しに外を垣間見。己の懸けるものもなく、ただ殺しの感覚すら伝播することはない。
戦は確かに、そう進化していくべきだろう。それは叡智を得た以上当然のことだ。それに今此処にいる兵共も、何も命を奪われることを想定していない訳でもない。ただ生き残るために、最善の装備と卑怯な手段を擁する。
――だが、それゆえの慢心が。
人は最早人以外に怯える必要が無くなってしまった。それはリーゼロッテをはじめとした全ての龍に対する宣戦布告だ。そして、忘れたのなら思い出させてやるのが筋というものだろう。
どんな力を持とうとも、ねじ伏せられない敵というものがいることを。


取り巻く気流が禍々しい暗黒の軌道を描いて、リーゼロッテの四肢に吸い込まれていく。はためくローブがその肉体を得た本当の姿を露わにする。
女体らしく華奢で優美な曲線に似つかわぬ無数の傷痕と、「何かを封じ込めるために」無造作に貼りつくされた呪符の数々。
そして、彼女が恐らく人の世界に馴染んでいくうちに身につけたであろうモダンなスタイルのレザーファッション。
己が身体を禁忌のものと自認し、なお鎖細工で嗜虐的に緊縛した不健康な姿は、彼女生来の残虐性と大仰な性格を暗示するかのように。
あたり一面の瘴気を吸収し、そうして本来の力を解放した彼女は魔術式を空中に出現させる。収束する闇が明滅し、僅かな静寂を不気味にもあたりに散らす。
幾星霜の遥かな時の向こう側に生まれ出た、神によって排斥されし最悪の術式。人を絶望の淵に叩き落とし、神々をして死を垣間見せた偉大なる絶対悪。幾重にもその姿を連ね、黒曜の煌めきを掲げたそれは打ち震える天地をあざけ笑うように、リーゼロッテを中心として侵蝕を続けた。
その渦中で、彼女はにぃと邪悪な微笑みを洩らす。
双眸に焔が走り、何よりも気高く深い闇が姿を覗かせ渦潮のように蠢きまわる。そうして彼女はなんとも楽しそうに術を紡ぐ。

「――サフィラ・インフェリエル・スメラーシェ・フレスベル。
絶対なる死を、至上の絶望を! 真なる裏切りを見せましょう! 怒りを携え蹲り、抗う事を忘れた愚者共を永劫の奈落へと突き落とせ。
初源の混沌を封じる深淵の魔氷よ、今再び現世に溢れ出荒れ狂い、救われぬ者共の魂を貪り喰らうがいい!」

瞬間、地が裂けた。
拡散する魔法陣が細胞単位で地を覆い、すぅっと呑みこまれていくと世界を覆さんばかりの震天が境を見分ける感覚を奪ってゆく。そうして溢れ出た悪意は堰を切ったように、眼前に塞がるあらゆる存在を漆黒の魔氷に閉じ込め、咀嚼し、何もかもを抉りとって再び深淵へと還っていった。街を蹂躙した鋼鉄の箱も、なすすべもなく悪意の顎の前に灰燼へと帰し地の裂け目に吸い込まれていく。
――静寂が再びあたりをその帳で覆い尽くす暫くの間の後に、嘆きの雨がさんざめく降り注いだ。遥かな深淵より出でし、有象無象の恨み辛みが凝縮されたそれは、悲鳴を思わせる音をただ響かせている。人々はただ畏怖を思い起こし、時間が静止したが如く呆然とその光景に釘付けにされていた。
彼らは思い出したように叫びをあげると、各々の逃げ惑う方向へと蜘蛛の子を散らしたように霧散していった。

――耳朶を打つ信号。ややけだるそうにリーゼロッテは耳に意識を集中させる。悪魔たるもの遠距離通信の殆どは思念会話だが、その思念という奴はどうにも受け取り手の意思関係なく空を飛び回っているため、あんまりに入り乱れると本人たちも混乱してくる。今耳元に飛び込んできた一報は店長のものらしく、それを通信の奔流から選別して受け取ったリーゼロッテはやれやれと返す。
彼の信号は芯が通っていて力強いから直ぐに判別がつく。


「首尾はどうだ」

「A-7地区を壊滅、念入りに潰したので壊走しとります。他は戦意喪失でしょうな。次へ向かいましょう。あっ店長、今月のノルマ幾つでしたっけ?」

「ざっと17体ってところだろう」

「それでは今ので後続も巻き込んでさっきのと込みで大体31人ってところなので、ボーナス弾んでくださいね」

「……貴様、まさか魔氷を使ったのか? 今此方から常用外の魔力反応を検知したが。アレは幾らなんでも自制しておけと……」

「あぁ、いえ。喰らわせはしましたが完全に引き摺り込んではいません。なので魂魄回収は辛うじて可能です。ちょこっと回収不能な残骸もあるかもしれませんがね」

魔氷に呑みこまれたものは魂の消滅を意味する。ことリーゼロッテの行使するそれは今では禁呪と呼ばれる類の、行使禁則指定術である。
発動が発覚した時点で術者は問答無用で終身刑だが、現在は非常時のため店長ことザラキエルの権限が黙認状態へと留めている。それを分かって言い放っているのか、行使発覚したところで確保してみろという一種の挑発も混じっているのか。彼女は軽快にそう応答しかしない。
呆れる店長――死神の長は「……さっきはつい弾みであんな事を言ってしまったが。加減くらいはしてやれ」と静かに言い放った。それに対しリーゼロッテは「わたしも其処まで鬼じゃないですよ」とけらけらする。全く反省の余地が見られない様は何を言っても無駄と思わせる魔力を持っていた。

「鬼では無くて、もっとタチの悪い龍だろうが…」

「ところで店長、そっちはどうなんです?」

「ああ、来たところで歯牙無い雑魚ばかりだ」 空を切る投擲音に、サクッと小気味のよい反応。思念の波にギャァと悲鳴までご丁寧に付き添ってくる。
何十本、何百本もの投擲刀を同時に空中制御できる死神店長に一部の隙もない。多少戦闘するような機会に恵まれなかったとて錆びるような腕でもなかったようだ。リーゼロッテは最初から心配もしていなかったが、人を化け物と呼べるようなタマでないことだけは再確認出来た。通話しながら群れる尖兵をあしらえるような男は矢張りその名に恥じない力を未だ持っている。

「ヤバくなったら知らせてください。一目散に駆け付けてあげます」

「心遣いは有り難いが、無用だ。ふん、まだ心配する量でもあるまいし幸い勘だけは戻ってくる」

「いざとなったら"邪眼"もありますしね」

「あんなもんは緊急手段だ、奥の手ってのはそうホイホイ使うもんでもない。それに俺は結局の処貴様程火力もないし、あの小娘程速度もない。
至って平凡な戦力と呼ぶにもおこがましい駒だよ」

「平凡な戦力、ねぇ。神の奴のところで暴れまわったり、天界の使徒共を血祭りに上げて宣戦布告したり、昔はあんなにブイブイ言わせてたのにですか」

「それだけ老いさらばえたということだ!」

ムキになってナイフを投擲する音と共に、刺された獲物が続々悲鳴を上げて塀から落ちてくるらしい。「くそっ、貴様が来てから本当にロクな目に逢わん!」 空中で向きを変更した投擲刀が追い打ちを掛けるように群がり幾度となく突き刺さる音が聞こえる。「……俺はもう少し平凡に暮らしたいんだが!」執拗に何度も獲物に攻撃を加える様には私情が混じっているようだ。

「……店長、今まで黙ってて、本当にすみませんね」

「ふん、貴様も所詮俺を利用していたに過ぎんということだろう」

「怒ってます?」

「騙された奴が悪い――それが悪魔だろう。それでこそ俺の部下とも、言えなくもない。むしろそのしたたかさを活かしてこれまで以上に働いてくれると俺は助かる――まぁ、別に何処に行こうと構わんがな。ああそうだ、さっさと消えれば給料泥棒も居なくなって済む」

わざとらしく、突き放すように彼は赦すのを、リーゼロッテは何処まで温い上司なのだろうとすら思う。
彼としてみれば、騙されたのは何にも代え難く不覚だったわけで、薄々と感づいていたのに言葉に出さなかったのは、多分現状を壊したくなかったからだろう。
誰よりも変化を疎み、それでいて悪魔らしからぬ、天使の頃の名残なのか優しさを携えた本当に悪魔にしておくには勿体ない上司だ。実際元は全く悪魔と疎遠どころか、対極の存在だというのに。
「俺の心配なぞ良いからやるべきことをやれ」とでも言いたげなその文句に、彼女は決して「はいそーですか」などと言ってやるつもりもない。
悪魔の優しさには、悪魔の天の邪鬼さで返してやる。

「――店長、隠居なんて店長らしくないですよ」

「あぁ?」

「いやですね。わたしリーゼロッテは、天界へと反逆する有志を募っているのです。
戦闘力が極めて高く、天界にちょっとでも恨みのある人、暴れ足りない人、誰でもいいからぶっ飛ばしたい人。ついでに死んでも世話なく回復できる強靭さを備えているとなおいい。そんな人材を募集しております」

「――今度は貴様が雇う番か」

「ふふっ、わたしとしても、神と交戦経験のある元大天使ザラキエルという唯一無二の逸材を見逃すわけにはいかないわけでしてねぇ。
堕天使狩りの使徒を何千と串刺しにした、投擲刀による多次元戦闘術、おまけに時空という概念を無視して並列世界の対象を消し飛ばす超絶反則兵器"邪眼"持ち。
聞くところによれば、元々癒しの天使だっただけに蘇生術にも秀でてるそうじゃないですか?こーんな超絶戦力、見逃しておく方が勿体ないっていうもんです。
どうですか店長、わたしと一緒に、いやロゼッタさんも込みで。打倒神々への反逆戦、一暴れしてきませんか。良いストレス発散になると思うのですけれど。
ああッ、でもこのパーティだと店長回復役ですかー! らしくないですねー!」

暫く無言で敵をあしらう音がただ垂れ流されていたが、ふっと頬を歪める呻きが僅かに聞こえた。
バカバカしい提案。誰よりも面倒事に巻き込まれまいと生きてきた一つの神威の、小さな気まぐれ。
昔の血が滾ったのか、無言のうちにも疾走する刃は加速していく。次第に嵐のようにそれは吹き荒び、
僅かな違和感を感じた次の瞬間、爆音と土煙と共にバベル中枢の方が吹き飛ぶ様が見えた。
塔の一部が、中間部分を消し飛ばされてしまって崩落している。

ふもとの街からもそれはよく見え、明らかな違和感は間違えようもない――其処に居るものを何の前触れもなく時空の遥か彼方に吹き飛ばし消滅させてしまう邪眼の行使に他ならなかった。塔の方では空間の一部が歪み、敵兵は侵攻しようにも足を進める足場がないという、想定もしていないだろう事態に戸惑いを隠せずにいた。

「――人に加減しろって言っておいてバリバリ邪眼使ってるんじゃないですよ! それこの世界にあっていい武器じゃないですから! バカ!」

「ああ、すまん。ついつい弾みでな……しかし」

「どうかしましたか?」

「ああ、全くもってその通りだ。こやつら歯ごたえが無さ過ぎるな。肩慣らしにもならん」

「ですよねー。人間貧弱すぎますよねー。ぷちって潰しても、全然分からないですもんねーっ」

「くくっ、連中なら――天界の化け物どもなら、もう少し楽しめそうか?」

「! 店長、それって――」

「まぁ、考えてやってもいい。俺も奴らには数えきれない借りがある」

「もう、店長ったら全然若いじゃないですかー! やー欲求不満なのわたしだけじゃなかった、よかったよかった」

「終末戦争最後の化け物と仮にも天使のなれの果てを一緒くたに考えるな愚か者が。貴様は純粋に破壊するために生まれた生物だろうが……」

「化け物なのはお互い様ですよ」

「それもそうか。まぁ、まずはこの戦を終息せねばなるまい」

「今はまだ良いですけどね。持久戦に持ち込まれたら、ちょっとヤバい気もします」

「……奴ら、こっちの戦力がフル投入できない真昼間に狙ってきやがった。吸血鬼と人狼は使い物にならんし、下級悪魔共じゃ人間の機動兵器相手には少々部が悪い。
結局のところ駒の質よりも量が厄介だ。ザミエルの奴は起きる気配もないしな」


元より夜間限定の活動しか出来ない吸血鬼は、本来強力な戦力になるだけに使用不可になっているのはかなりの痛手だ。
真昼間には人狼も変身すら出来たものではないというから、質の低下はゆゆしき問題だろう。ウィザードやウィッチというのは、ベースが人間だけに耐久力にやや不安が残る。
そも機動兵器相手にまともに戦える奴は数えるほどしかなく、ゴーレムは機動性に劣る。第一悪魔それそのものが極めて統率性に欠ける。
結局のところ、幾ら駒それぞれが強くとも総合的には向こうに敵う筈がない、というのが辛いが現実ではある。全てを束ねるザラキエルの心中は察するに余りあるだろう。
最後に出たザミエルという名前だが、リーゼロッテも詳しいことはよく知らない。死神店長と知己の仲で、かなり扱い易さに欠ける人員であることくらいか。



「正門は?」

「あの爺がよく抑えているぞ。それに、実はな……魔界法違反ではあるが反魂でこっそり一人呼び出しておいた」

「ど、どさくさに紛れて何て事してくれてるんですか店長…」

「大義のためには小さな悪は仕方なかろう」

「我々、大義ですらなく小さな悪でもありません。的確に表現するならば大悪です」

「そ、それもそうか……」

「で、誰なんです、黄泉還った人」

小声でこそこそとやり取りした後に、リーゼロッテは「えーっ!」と悲鳴を上げた。「大声でしゃべるなバカ者」

「それって、カーラさんと克ち合ったらヤバいんじゃないですか。殺し合い始めますよ多分」

「それがな、驚いたことにこやつに殆ど悪意は残っていない。それどころか、元人間のくせにゴーレムよりも頑丈ときたもんだ。
刀剣しか扱えぬという融通の利かない奴ではあるが……いやはや、たまげた人間もいたもんだよ。頼もしいことに損傷無視してバッタバッタと殺戮の限りを尽くしているぞ」

「悪意はないってどういうことなんですかそれ」

「いやな、どうにも信じられんが、笑うなよ? あの魔女に惚れているらしい」

「……うそですよね?」

「当然俺もそう返したさ、だが至って本気だそうだ」

「……あの甲斐性なしのカーラさんに?」

「ぶっ飛ばされた拍子にあたまがいかれてしまったのか、ってあたまがそもそもないんだがこやつ。俺も全くもって正気を疑うぞ……というわけだから、守りは心配するな。
作戦通りに前線を切り開き、可能ならばフランケンシュタインを叩き潰せ。ボーナスの上限については心配するな、融通してやる。
禁則魔法の類はあまり使いすぎなければバンバンぶっ放してよし。ん、矛盾しているな」

「ロゼッタさんライバル出現だ…」

「何か言ったか?」

「ええいや、こっちの話です」


思念波切って、再び新しい交戦地区を探しに向かう。
そうして彼女は空を見て、大きく溜息をついた。憎たらしいくらい蒼い。

「こりゃあ、なんだか波乱の予感がしてきちゃいましたなぁ」







【Viol Viera】

―Witch of Cursed Blood―

―aberration hunting file#11―

[Witch and Solar Eclipse]









目を醒ませば、あたりは騒然としていた。
そこらじゅうで魔力反応に溢れている。既に開戦していることを悟った魔女は、手早くブラウスに袖を通し浮遊する櫛やらに支度を任せ、
最低限身なりを整え次第バベルから外周へと躍り出た。その間にも呻りめいた響きが塔を断続的に揺さぶり老朽化した建物の隙間から埃を振り撒く。どうにも切羽詰まってきたようだ。幾らザラキエルといえど物量の前にはなすすべもないだろう。
信号を発信すれば、ザラキエルやリーゼロッテから返信は無い代わりにロゼッタからはなんとも素早く返ってきた。無事である事を喜ぶと同時に、こんなになるまで寝ぼけていた自分に嫌悪を催す。本来であれば前線を切り開くのは自分の仕事であった筈だ。


「ロゼ! 無事でよかった」

「あたしがこんくらいの戦闘でくたばる筈が無いじゃん。もう、心配症なんだから」

「でも、事態はよくはなさそうね」

「このまま長引けば、ね。でもリーゼがかなり前で抑えてくれてる。うまいこと押し返せば、まだまだ諦めたもんじゃないよ」

思念通信を受け取りながら全速で通路を駆けると、二三体の有翼悪魔が往く手を塞ぐように飛び込んできた。魔女は迷いなく魔剣とギロチンを疾走させ、爪に魔を点し振りかざそうとする悪魔の脇に滑り込ませるように叩きつける。真っ二つに寸断され、体勢もそのままに血飛沫を吹き続ける小さな噴水を取り残して魔女は石畳を蹴る。

「あの死神娘が働いているとなると、世も末かしら! それはともかく、そうねまだ諦めるには早過ぎるし何もしていない。
そもそも、私は負けようが勝とうが、あのクズ野郎をこの手で始末するまで腹の虫が収まらないからね」

「どの道勝つ気でやれってことだね姉上」

「そうそう、それが言いたかった」

「ともあれリーゼの豹変振りは一度見てきなよ! ふふっ、死神店長さんも唖然の一言なんだから」

何を見てきたのか、得意げにロゼッタはそう語った。あの死神娘の正体が何であろうが、先程の衝撃の一端である可能性は高そうだ。となればかなりの高位には違いないだろう。
昨晩の店長――ザラキエルも、今思えば正体を知っていそうな口ぶりではあった。あの死神はいつも何かを隠している、苛立ったところでそういう種族なのだから致し方ないのかもしれないが。

「……まぁ、あの腹黒が自分より強い駒を隠していたところで今さら驚いてやる義理も無いわ」

「あれ?意外と反応薄いなぁ」

「あの男の助手を長年やってるんだから只者じゃないだろうとは感じてしかるべきよ。それよりもロゼ、今敵の渦中よね。どう、フランケンシュタインはいそう?」

「……あたしはその人の気配が判別つかないからよく分からないけど、リーゼに聞いてみたらおかしいですね、だって。彼女とはさっきからずっと別行動だけどね」

「そう……大体読めてきた。あの野郎が正面切って戦争ふっかけてくる筈がないか」

魔女の知るフランケンシュタインという男はバカ正直に正面から仕掛けてくるような男でも無く、自分がすぐさま探知されるような処にいる程剛毅な輩でもない。
戦場の全てを盤面としてしか捉えず、自らを其処に置くこともなく。守るべきものや戦う理由という奴にも無縁で、ただただ、自分の使命は「この摘んでおくべき危険」を排斥する、それだけに集約されている。それだけに集約されているからこそあの男は厄介だ。目的の達成のためには、ありとあらゆる区分や分別など意味をなさない。
枷の無い力程真に畏れられるべき危険だという事を、そして本人も知らないのか知っていてなおやっているのか、早い話が非常に読み難い人間だということだ。
ロゼッタは静かに怪訝そうに訊いた。

「なら、何処から来る……?」

「それが分かったら苦労しないわ。今は専守防衛状態を維持することに尽きるかな。勿論外は――」

「攻めはあたしたちに任せて。物量で押せる事の限界を見せてやる」

「それでこそエピタフィオンだ。ある程度削り倒せば向こうも勘づいてくる筈」

「ふぅん、元連合が一枚岩で無いところを狙うわけか。おっけー、あたしは此処で塔に向かう連中を削ぐことに集中するよ。さぁ気張っていこう!」

雷光が炸裂し鼓膜を割りそうなくらい反響音が響いた後に、ロゼッタは今いたであろう場所から猛烈な勢いで吹き飛んでいった。
人の身でありながら質量を電子に換算して移動できるというのは彼女の持つ数多くの異能力の一つであり、また彼女が魔女界最強の存在である所以の一つでもある。
魔女の知る限り電線や電柱、それに準ずるものがあるだけでその間断を飛び回り文字通り光の速度で相手に肉薄し死角に回り込めるのだから、速度というものが時に力を圧倒する事をまざまざと突きつけられるような気持ちだ。
しかしそれだけに前衛に心配は無用だろう。むしろ、問題は此処から――

「さて、どう立ちまわったものか……」

真昼間の白光が彼女を射抜いた。
中庭の平坦な芝生を駆け、正門に向かう。先程からどかどかと振動が止まないのは視線の向こうに見える、ベルンハルトのゴーレムの仕業だろう。あれなら陽光の下にいようとも障害は無い。土煙を上げ尖兵を薙ぎ払っている様子が遠目でもうかがい知れた。其処に目掛けさらに彼女は加速した。
いきかう敵を薙ぎ払い、蹴飛ばし。二本の巨刃を諸ともせずに振りまわし、人であろうと魔物であろうと凄惨な斬撃の果てに肉塊にして土煙の中枢に向かって行く。
されど敵も、特に統制のとれた死霊に恐怖や怯みといったものは無い。次々に畳みかけられていても臆することなく魔女に飛びかかって行き、果ては視界いっぱいに接近を許してしまう。

「ちっ、魔力消耗したくないんだけど――!」

手に魔を点し要撃しようとした瞬間、その視界に鉄の塊が雪崩れてきた。いや――よく見ればそれは巨大な甲冑のようだ。
魔女はそれを知っていた。忌々しい、何処かで刃を交わした事のある巨躯。黒金の鎧は血飛沫に染まり、如何なる剣戟も寄せ付けぬ堅牢さを物語っていて、
しかも何より、あたまが無いのだ。
よりによってそいつは、出し抜けに首なしのまま口を開いた。

【そいつを貸してくれ】

何故だか、反射的に魔女は魔剣を投げた。
人の丈程もある、巨大な魔剣は空を切り裂き、回転しつつずんと重量感を奏でそいつの両手に収まる。
慣れた手つきでそれを右手で振りかざすと、鋼鉄は再び切り返し空を引き裂いた。
軌道上にある有象無象を蹴散らしかねない衝撃波と、同時に凍てつく霜の如く生える紫水晶。
間違いない、こいつは――

敵の一波をやりすごして、首なしは振り返った。鈍重な甲冑で翳りを利かせた、威圧的な立ち姿は驚くほど変わっていない。
粉々に打ち砕いたというのに、全くなんと往生際の悪い奴だろう。この期に及んで帰ってきて、よりによって自分の目の前に現れるとは。亡霊らしく地獄の底でもがいていてほしい。
そう思いもすれど、何故だか此方側について、しかもその刃が自分に向けられないことに彼女は安堵してもいた。
それにしても、なぜ今さら地獄から這い戻ってきたのか。心の裡を先読みしたように、首なしは答える。

【呼び戻された】

「誰だ、そんな余計な事した奴は……」

【あのなんといったか、死神男の方だ。貴様と再び見えて剣を交わせるとあらば、別に理由や条件などなんだっていい】

「喧嘩したいから戻って来たってわけね。やれやれだわ」

魔女が溜息をつくと、首なしは彼女の首ねっこにぐんと魔剣を向けた。
驚きこそすれ、殺るなら最初からそのつもりで動いている。この首なし騎士は喧嘩がしたいだけであって、殺しがしたい訳ではない筈だ。
とはいえ、魔剣の放つ力が目の前の獲物に痺れを切らしてじれている様を見るととても気持ちのいいものではないし、首元に剣が突きつけられるのも然りだ。
彼女は切っ先をつまんで反らし、何処とも知れぬあたまをにらんで首なしに語りかけた。干渉する魔力が指を焼く。

「なんの真似だか知らないけど。もう一度死にたいっていうなら、後にしてほしいわね。
再会を喜び合う仲でもないし、今は一刻を争う。 ……あんたがそこそこ役に立つっていうのは、まぁ認めてやってもけどね」

売り文句に買い文句とばかりに言い放ってやったのだが、なんと首なしは突き立てた剣を翻し刃の方を握って柄を向けた。
これには魔女もきょとんとして、それを黙って見ている。見事に肩の力が抜けた。重力に逆らって浮き上がった金髪から魔力が抜けて交戦状態を解除する。

【持って行け】

「……あんたが持ってるのが一番合理的じゃないの?
だって、さっき咄嗟にこれを使ったのは、並みの刀剣じゃあんたの術の負荷に耐えられないからじゃないの」

その証拠に、正門には無数の刀剣類が刃毀れしたりへしおれたりして散乱している。
元鍛冶師とは思えないぞんざいさだが、悪魔化してしまった代償もあるのだろう。通常の刀剣を握れば砕けてしまうことに彼は聊かの後ろめたさも覚えつつ、自分の魔力に耐えきれない剣が余りに多いことに嘆いている様にも見えた。

【此方としてもそうするつもりだったんだが……なんでだろうな。
アネクメネは、貴様が所持することを望んでいる、とでもいおうか】

「何それ」

【剣には主を選ぶ資格があるということだ。ましてそれは、作った当人が自分でいうのも何だが稀代の作の魔剣だからな。
それが貴様と居る方が有意義だと言っているのだから、そういうことなのだろう。預けた相手を間違えていないようで良かった】

「つまり早い話が、剣と話せるのね。なるほど」

【バカらしいと思うか?】

「戦闘機と話せる知り合いもいるから、今さら大したことじゃ驚きもしないわ。
まぁ、託されたからにはなるべく大切に扱うことにしましょう。それじゃ、なんとか此処をよろしくね」

【ああ、カーライア。最後に一つ訊かせてくれ。貴様……混じりものだな】

「……気付いてしまったかしら」

【何度も剣戟を交わしていれば……自ずとな。
アネクメネも相手が普通の人間であれば此処まで過敏にならずとも済んだであろう。だが貴様の打ち込み、そして血の情報――僅かに『人ではない部分』が垣間見えているのだ。
その、此方の思いすごしであってほしいとも思う。だが私は貴様のその瞳の奥に映る焔を、その細身に違う尋常ならざる膂力を、そして邪であるにもかかわらず高貴なその血族を知っている。我が名はあくまで模倣だ、純血の貴様らに比べたら遥かに弱く脆く卑しい】


ノスフェラトゥ、即ち血を吸い、闇を闊歩する魔族を本来意味するその言葉。
彼は何処でそれを得たのだろうか、恐らく鬼道極まり無い暴虐の果てに民衆から付けられた渾名であろう。
そんな彼は、自らを模倣であるという。それは目の前に「本物」が居るからだ。
対する魔女は、背越しに暫く佇んでいた。ふぅと溜息を優雅につき、見透かされた真実を久しく再認識していた。

「吸血鬼、そう呼ばれるのは久々かな。軽蔑する?」

【バカな。むしろ納得したよ。ただの人間にしてはいやに頑丈だなと疑問に思っていたところだ】

悪戯そうに訊く魔女に、半ば呆れるようにノスフェラトゥ・ブラックスミスはせせら笑った。魔女が半人半(正確には四半)吸血鬼のハーフだとして、彼の場合は元人間現悪魔騎士だ。
そして剣によく通じているからこそ、見定められた特性でもある。並みの魔族では、魔女に吸血鬼の血が入っているなどということは交戦しても気付かない。
お互い似たり寄ったりの化け物で、人間でもある。だからこそノスフェラトゥは「思いすごしであってほしい」と言ったのだろう。
人ながら魔の身の不便さは、自分が良く分かっているから。

【不思議な事に貴様は……陽光を浴びても滅びないのだな。河川に困ることも無さそうだし、招待せずともずかずかと建築物に押し入りそうだ】

「まぁ、実際吸血鬼の血は四分の一だからね。母方の祖父が、そこそこ名のあるヴァンパイアだった。半分以下の血になれば吸血鬼の制約は殆ど無効化されるのよ。
私に残されてるのは僅かな吸血による能力奪取能力と、魔力くらい。ああ後は満月の夜にはオーバーロードしても問題ないくらいかな。
ちゃんと鏡に映るし、吸血はぶっちゃけしなくても生きていける。 ……ただまぁ、あんまり知られたくない事ではあるかな」

吸血鬼は血を吸い人を喰らい散らかす凶悪な存在だというのはどの世界でも共通認識だ。
況してや魔族同士ですら、その強力な出力と狡猾な戦闘術で畏れられる存在でもある。実際に魔界の政治を担う議会でも吸血鬼のエルダー(元老院)の持つ力は一目置かれている。
余り人に、親しいのであれば尚更知られたくない事実ではあるから、魔女もすっかり忘れることにしていた。

「ザラキエルと閻魔様、後は当然ながらうちの執事は知ってるけど、他の連中にはただ魔族ってことにしてる」

【貴様の愉快な仲間たちが、貴様の正体を知ったくらいで畏怖し中傷すると?】

「彼らならそうはしないだろうけど、可能性が少ないとはいえ私は今を壊したくない。
……私はね。あくまで人間として生きたいの。昔も今も、これからも」

寂しそうに振り向く魔女に、【そうか……】と首なし騎士は沈黙する。暫くすると、何処からか信号が送られてきた。
それも哄笑。誰であろう、いつもは根暗そうな死神店長だった。

『うはははは! 自白を貰ったぞ!』

「……なによいきなり?」

『いや、貴様と首なしの監視にな? 殺し合いをいきなり始められても困るってもんで、一応盗聴させてもらっていたんだが……その、すまん。どうしても聴きたいという奴が――』

『ひどいよカーラ!』

入れ替わりに耳を劈く黄色い魔力波。間違えようもない、ロゼッタのそれだった。珍しく魔女は仰天し動転し、最後に狼狽した。とんでもない話をライヴ中継されてしまった。

「あー……ごめん。今まで黙ってて」

『ひどいよ、ひどいよ! 半吸血鬼だったなんて! 騙された! あたしになら何もかも打ち明けてくれてると思ったのに!』

「……騙してる、よね。ごめんねっていっても、何の償いにもならないよね」

『カーラのバカ! そんなにあたしが信じられないのかっ! そんなこと一度も話してくれなかったじゃないか!』

面と向かって、ではないが。こうやってまっすぐ罵倒されてしまうと、中々に堪える。
罵倒されることも中傷されることも慣れていても。こうも、親しい間柄の人であればある程、心に刺さった白樺の杭のように、ぎりぎりと苛んでくる。
今はただ、耐えるしかない。信頼は恐らく、当面の間は回復しないであろう。なまじ今までが仲良かっただけに、ロゼッタの裏切られたという想いはそう軽くない。
だが――次の一言がさらに全てを裏切った。

『――ずるい』

「えっ?」

『半吸血鬼だったなら、夜這したりあたしの血を吸ってくれたっていいじゃないかぁ……』

これにはさしものザラキエルも唖然とした。正確には、理解に数十秒を要して最後に引いた。

『……あーあ、ザラキエルよりリーゼロッテへ。そのなんだ、今まで気付かなかったんだが――エピタフィオンの娘子、あいつはそういう気があるのか?』

『リーゼロッテより店長。めったくっそ遅いご理解ありがとうございます。店長長生きしてても男子は所詮男子ですな。アレですよアレ、薔薇に対する百合、或いは濃厚な女の園……』

『あー、理解した。要するにレズビアン……』

『ちっがーう! おい死神コンビ、表に出ろ。その減らず口縫い合わせて消し炭にしてやる。あたしとカーラはそんなフケツな仲じゃないってことをきざみちらし五目御飯』

『錯乱してるな』

『錯乱してますね』

『飲みの時の言動はまだ言い逃れは出来たが、なぁ』

『"あたしの血を吸って"発言は聊か不用意に過ぎましたね。決定的失言です』

赤面するロゼッタと唖然する魔女を放置してこそこそと交わされる魔力信号。首なし騎士に関しては、無い筈の首元を堅牢な空籠手でこそばゆそうにかいて【すまぬ……】と呟いた。

【なにやら私の所為で、貴様の立場がえもいえぬことになっているらしいな……】

「まぁ、なんだか思ったよりも軽快に受け止められているようで良かったわ。真剣に悩んだ私がバカだった」

【それもしても、佳き友に恵まれている。羨ましいよ】

「そう言われると嬉しい」

『あー、ザラキエルより魔女。見ての通り後衛前衛共に今のところ異状は無い』

「今のところね」

『そうだ。野郎の事だ、何かとんでもない隠し玉を持っているに違いない。引き続き警戒を怠るな。もしもの際は――』

死神は少しためらった後に、思い直したように言葉を続けた。 『その血、解放して構わん。そもそも、リミッタ―付きで勝てる戦では無いからな』

「まだ月が出ていないから当面は期待しないで頂戴」

『まぁ、もしもの話だ。それにしても……貴様は吸血鬼に生まれるべきだったな。同様にあの小娘もずっと人狼向けだ』

小馬鹿半分、本音半分といったように。ひどい皮肉だと魔女は内心あきれ果てた。吸血鬼と人狼では天敵同士ではないか。
『今あたしんことを獣臭いっていった奴はだれだー!』ロゼッタも怒号を挙げている。怒りを拳に宿し敵陣にやつあたりをしているのが目に浮かぶ。

「それは皮肉?」

『いいや、人間であって良かったなと同時に安堵もしている。貴様らに人狼やら吸血鬼をやられては魔界が持たぬ……っと。新手が来たようだ。罵倒は後で聞こう』

「お互い次の交信まで命があることを願っとくわ。じゃあこっちも、本格攻勢に出るとしますか」

死神店長の交信途絶と同時に不穏な振動がバベルの外壁を揺さぶり、大きな影が視界を覆う。
見上げれば、四階建て相当の巨躯――それも酷く鼻を衝く臭い――腐敗液を垂れ流しながらはしたなく防柵に足をつける屍と化した龍。
既に意識は無く、ただ傀儡として送り込まれているのであろう。何も考えず、自分の身すら考慮しない特攻は見ていて憐れさを催すが、それでも腐っても鯛、死んでも龍だ。
魔女は刃を振り下げた。魔剣とギロチンが共鳴し、色の無い魔力波があたりに響き渡る。龍の眼は以前定まらず、ただ殺意の赤を秘めて。
真正面から化け物に睨まれては少し息苦しい。襟元の漆黒のネクタイをくいと緩め、余裕そうに魔剣を空に放り投げ、
即席詠唱から電光のように跳躍。一気に距離を詰め腐れた肉体に引導を渡すかの如く、ギロチンを袈裟がけにすれば、破魔の刃に耐えきれずに龍が悲鳴を上げた。

【がぁぁあ、あああああ!】
「ええい、腐ってないでいい加減に往生しろッ!」

死角となる龍の背にギロチンを斬りいれ、破れる肉の狭間に突き立てる。揺さぶりが一層強くなる中魔女はギロチンに左足で踏み入れ、さらに蹴りつけ跳ねあがる。
宙空をぶんぶんとがなり立てて回転する魔剣を掌握、背に展開する「オーケストラ」の魔陣、それを剣山の如く下に突き立て落下、着弾。
断末魔は一瞬だった。間もなく斃れ臥し、龍は肉を溶かして蒸発していく。黒い瘴気は骨から湧きあがり、死の更なる向こうによってようやく呪縛から解放されたことを告げていた。汗一つかくことなく降り立ち、魔女は後続を薙ぎ倒して進む。隣を見れば、同じような巨躯を持つゴーレムが反対側の屍化龍に思い切り拳を突きさしていた。
スケールは恐ろしく人と異なるのに格闘戦にもつれ込む両者を見ていると率直な感想が出てしまう。バカバカしい光景ですらある。

「一昔前の怪獣映画みたいになってるわね……」

あたりの魔道士たちは龍に怯え、まともに隊列も取れなかっただけにしばし困惑していたが、事切れた事が確認でき次第鬨を挙げた。
小物の相手となれば火力に勝る彼らの出番だ。ゴブリンやらの小鬼の類も頑丈で前衛向けである。
完全に瘴気が無くなる頃には、彼らの中から包帯塗れの男――正確には男かどうかも判別がつかないが――がひょっこり出てきた。
端々からやつれた、というよりも草臥れた黒ずんだ肌が見え隠れしているが、なりはタキシードにシルクハットといたって紳士的で、不気味を通り越して滑稽ですらある。足取りはステップを踏むようで、目が覚める位にひどく軽快だ。それでも決して低い身分でもないらしく、小鬼たちはそっと道を譲り裂け目が出来た。
包帯をごにょごにょからませながらそいつが陽気に口を開く。帽子を取るとまるでのっぺら一面の包帯で正体が見えない。

【おお、お前か旋律。ドラゴン・ゾンビを二太刀で沈めるとは成程まるで腕は鈍っていないようだな。感心感心】
「あーら、誰かと思ったらファルアウンじゃないの」

ファルアウン――ケムトリーア語で王だ。彼はかつて一国の長だったらしいという記述も残っているが、今幾つかは魔女も知らないしきっと意味の無いことなのだろう。
本名もはっきりしないし、わかりやすいから王でいいと本人も周りもそういっている。
ただ、同じケムトリーア人としてロゼッタと何らかの接点を持っているのは確かなようだ。恐らくは系譜を隔てた主従が今でも存在している。かつて邂逅していたときに、ロゼッタが珍しく神妙になっていたのをよく覚えている。
当の、守られる側のファルアウンはそんなことはいざ知らず、【おじさんくらいに思ってくれていいのよ】と言ってはいるが、主従である以上けじめはしっかりしたい、というのが従者の言い分である。
そんな悠長な彼は動かない亡骸を見据えて眉をひそめた。
薄汚い瘴気をあげて蒸発していくそれを見て、彼は魔術の祖ながらに思う処があったようだ。

【ふむ……反魂では無いようだな。仮にそうであったら、もう少しコントロールは利く筈だ。これは、どうやらもう少し荒っぽい手段のようだが】

「龍の亡骸に"別の魂"を詰めてるのよ。手頃な、きっとそこらの魔獣のものをね。術式も恐ろしく粗野だわ。奴らはこの死骸に特攻兵器以外の価値なんて見出だしてない。
そもそも、本当に龍が心身同体だったら私風情相手に掠り傷を負うこともないでしょうに」

【真なる龍はあらゆる剣戟を弾き獄炎にて一切を灰に帰す、とは有名な話だな。むごいことを……となると、奴らは龍の死骸を何処からか調達しているということだが――フランケンシュタインめ。何を考えている……】

「さすがの貴方でも目星が立たないとなると、厄介になってきたわね」

【こんなときにのうのうと棺で寝てはいられないからな。ザラキエルに返す借りもある。ときに旋律、エピタフィオンの末娘は息災か?】

「あら王様、自分で様子見にいけばいいじゃない。あの一族は貴方の家臣でしょう?貴方を守るためだけに最強を維持してるのよ。健気なものだわ」

【いや、そのだな。未だそんな命を引き摺っていかんでもいいと言ってしまった建て前、どんな顔をしていいか分からぬものでな……】

ぼそぼそと、王らしくなくファウラウンは呟くのを、魔女はちょんと小突いてやった。 「恥じることなんて何も無いんだから、王様らしくしていなさいな」

【む。お前のような小娘に説教されるとは、我も落ちたもんだ】

「そうそう、その威厳をもう少し前に出せばいいだけ。簡単な事でしょう。ミイラの王様だの悪魔騎士だの死神がいったり来たりしてる世の中なんだし体面なんてもう気にすること無いのよ。ご丁寧に貴方もう体面も何も、皮膚すっとんで中身だけだし」

【そうはいうがな、先程龍が飛んでいたのだぞ。それも生の。さすがの我も仰天して目の玉が零れ落ちる処であった。ほれほれ今にも零れ落ちそうじゃ】

「生の?」

【ついでに背中にエピタフィオンの娘がちょこんと乗っていた。こんなときに龍を動員するとは、何処に隠し持っていたのやら。ザラキエルの考えはとんとわからぬ】

ファルアウンは優雅に肩をすくめた。
死神店長も一歩自分の領地に入れば途端に地主さまだ。こんなにも本名で呼んでくれる人がいる。
いつもの人間界であったら「てんちょー、てんちょー」とばかりしか呼ばれないものだから、魔女としては聊か妙な心持だ。店長という名が既に体を成している感がある。
それでも、「死神将軍」の異名は伊達ではないらしい。どんな悪魔も魔族も、彼の前には平伏して一応言う事を聞くし逃げずに戦う姿勢を見せている。
それは何よりも、ザラキエル本人の人徳もあれ、この「バベル」という土地に愛着があるからだろう。
吸血鬼は特に自分のテリトリーに執着が強い。自分の生まれた土地を離れれば生きていけぬ者も少なくないから、今死ななくとも何れ滅んでしまう。
彼らにとっての戦争とは略奪でも利益のためでもなく、とかくそういうものなのだ。戦わずにいられない理由があるなら彼らも本気になる。
それにしても、龍というのが気になるし何よりもロゼッタがその背に乗れているというのも気になる。だが大体揃えたピースで答えは紡げそうだ。
龍を動員することが出来る店長と、ロゼッタ曰く「リーゼの豹変」。この二つはなんとも切ってはなせるものでないらしいということか。

「龍……」

【あれは息吹一つで国を傾けるとんでも生物だ。此方側に一体あるとしてこの戦、勝ったも同然と思いたいところだがな……二体になったら、そうもいっていられぬ】 曇らせる回答は、大体言わんとしていることも伝わる。 「屍であれ龍を扱える連中が本物の龍を囲っている虞も無きにしもあらず、か」

【考えたくもないが、それは否めぬ。そうなったらなんだ、悪いが我にはどうしようもないぞ。アレにダメージを与えられる奴なんぞ、限られも限られるからな。
エピタフィオン、ザラキエル、後は寝坊助のザミエルくらいか。お前のとこの執事も無理ではないだろうが、あの爺はよく分からぬ。中身が見えんでな】

剣戟、魔術、兵器のどれをとっても現代の方法で龍に傷をつけることは不可能と言われている。
況してや撃破など、考えられもしないだろう。龍を撃破するには同じ龍でなくてはならないというのが通説だが、龍同士の戦いなどというのは前代未聞、空前絶後の代物ですらある。彼らは個を大事にし、何にもなびくこともない孤高の存在だ。同じ戦場に出た例は殆ど確認されていない。
今いる面子では何とか渡り合えそうなのはロゼッタとザラキエル本人くらいであろう。死神の中でも元天使、神の力を行使可能な彼の「邪眼」を前にあらゆる障害は意味を成さずに、ただ砂にへと帰化する……即ち、防御不能・問答無用で消滅させる秘技と言われているのだが、本人がもう前線で働くような体力は残っていないというのが気にかかる。
司令塔だけに、ああ見えて数秒の裡に数百の指令を送りだしている存在だ。それはおいそれと動かすことはできまい。チェス盤の王将が前に出ること自体負けたも同義だ。
執事は言われればやりかねないが、先程訊けば「龍は少々守備範囲外ですな」という感想を漏らしていた。万能執事にも限界はあるらしい。

「国崩し相手に三人も個人対抗できる奴が存在する時点でおかしい魔界だけどね」

【全くだ】 ミイラの王様は意を同じくした。 【閻魔の奴が戦力過剰所持で魔界法違反だと愚痴っておったわ。まぁこういう時には頼もしいがな】

「普段死神様の代わりに統治する側も骨が折れるわけだ」

【ふふん、あの天使だか死神だか正体の分からぬ男は料理店を経営しておればいいのだよ。まつりごとごっこは、我に任せていれば好い。
さぁ往け魔女。我とてゴブリン一匹くらいの戦分は果たそう。存分に奴らに身の程というものを教えてやるがいい】

強力な術式で尚も命を繋ぐミイラの王は砂煙の向こうを指差す。魔女は無言でうなずいて、剣を担いで駆けていった。
ズン!と間を置いて重い音がした、王の後ろにやけにでかい悪魔騎士が甲冑を鳴らして現れるに、王は矢張り優雅に振り向く。鬼のような形相を――浮かべているかは頭が無いので分からないが、どうやら彼は心配しているらしいという事までは王にも汲み取れた。

【……往ったか】
【これはこれは、首なしの悪魔騎士君。彼女ならとうに掃討に向かっていったよ……心配かね?】
【いや、あやつは死なぬ女だ。身を持って私はそれを叩き込まれたからな】
【とかなんとか口じゃ言っても一応はアレも年頃の女なのだから心配になる心持も分からんでは無い。……おっと失礼、口が無いな。
そうだな――刃が必要ならば力を貸そう。んむむむ、それっ】

王は右手に魔を込めると、ぽんと異空間から二振りの刃物を取りだした。 【城の蔵物だが、なぁに使ってやった方が剣も浮かばれる】
西洋風の巨大強靭な両刃刀に、滴るほどに反り返った細身の東洋剣だ。
【フラガラッハと妖刀村雨……君程の使い手なら使いこなせることも出来よう。持っていくと好い】

手に持てばその偉大さが分かるほど、よく研ぎ澄まされた剣だった。首なし騎士も、自分でも此れほどのものはお目にかかったことが無いというような目を――勿論ついていないのであるが――したようなしぐさをした。

【これは……! このような業物を、いいのか?】
【剣と騎士の本分は姫君を守ることにある。戦で本分を全う出来るのならば、剣も喜ぼう。
まぁ、なんだ? 此方側の姫君は少々暴虐の過ぎる、別に守らんでもいい対象ではあったりするが。ふふん、事はついでという奴よ】
【王よ、感謝するぞ】
【嗚呼、礼は入らぬ。ほんの暇潰しよ。さてさて、我も働こうとするか】

再び何事も無かったかのように王は溢れかえる前衛の群に腐り落ちた目を向ける。前方には怒涛の群れ、人の差し向けた近代軍勢。
シルクハットをそそくさと下げ、王はすらりと伸ばした腰を少しばかり前に落して向き直った。絶望的な質量を前にまるで動じないのは、遥かな星霜の裡に人間を知りつくした余裕と貫録か。むしろ楽しげに、王は指をくねらせた。不安定な態勢と思われるような奇怪な立ち姿を、猛烈な砂塵が彼の側面を守る。竜が巻くに等しい天空まで伸びるそれを宿した掌を、軍配を指すように。
【ノスフェラトゥ君、覚悟はいいかね? 我はオールオッケー、どんと来いとでも言おうか】
【望むところだ】

  




















何か様子がおかしい。
それに彼女が気付いたのは、前線を切り開いて数十分もしないうちだった。
本来であれば、だ。魔界の戦力を相手に、まともに正面からぶつかるのは愚の骨頂……それは人間界も同じではある。ただ、魔界の「後衛」に裂く戦力の比は人間のそれとは圧倒的に比重が異なる。魔界の住人は誰もが誰も、飛び道具を有しているといっていい。前衛向けな先の悪魔騎士であれ水晶の剣戟を飛ばせるし、況してや純粋な魔道士であれば攻防の比重はさらに極端になる。早い話が、戦力はケツから削った方が有意義だというのが魔界の通例である。
だというのに、リーゼロッテの見るに限り、布陣はどうにも決してその慣例に習ったものではなかった、いやむしろ、その配置は無駄に消耗するためのものといってよかった。

(フランケンシュタインの奴らしくない配置ですな……)

悪魔相手に戦い慣れた男の攻め方とは到底思えない。そしてそこが、彼女の疑念の持つ最大の点であった。
押し寄せる歩兵と、その合間を縫う巨人の尖兵を凍てつく絶対零度で薙ぎ払いつつ、彼女は戦場を俯瞰する。らしくない戦いは、陽動に見えなくもない。
こんこんと耳元を打ち通信を開始。雑多に塗れる上司のことだけれども、きちんと返答をしてくれるのはさすがである。

「てんちょー、やっぱおかしいですよ」

『貴様もそう思うのであれば、これは確信していいと思うべきだな』 店長はこれから何を言うのか見透かしたようにそう呟く。

「はい。余りにもゴーレムの運用に斑が目立ちます。これでは要撃してくれと言っているようなもんです。音を立てて森の中を象が歩くようなもんだと言えばお分かりでしょう。物理耐性に特化したゴーレムはただでさえ魔道に弱いし、その亡骸と来たら耐性は悲惨なもんです。おまけに人間の機甲兵器も、あの展開と来たらお粗末千万ですわ」

『フランケンシュタインが無能になったとは勿論考えまいな? よし、感想を率直に聞かせろ』

「――これは時間稼ぎと取ります」

『久々に意見が一致したな』

「恐らくは、バベル中枢が狙いかと。何処から来るかは分かりませぬが……奴ら最初からまともに戦争する気は無かったようです。ドラゴン・ゾンビ等の魔道尖兵は完全に使い捨て、いやむしろ、この戦場で使い捨てでない駒の方が少ない筈です。行ったきりの特攻兵、こりゃ悪魔共も梃子摺る訳ですわ」

中枢という言葉に、僅かに死神店長の思念波が揺れた。
最初からわかり切っていたことではあるのだが、此処まで大きく出るとは、堅実なやつらしくないという思いもどこか残っていたからに違いない。もちろん今となってはそんなものは甘えに過ぎなかった。事実ならば今に行動に移す必要がある。
だとすれば・・・・・・矢張り魔族で言うところの「人間の予測できない賭」というやつに当てはまる。奴らは特に損得、リスクリターンを超え、合理の枠を打ち壊した決断をするときがある。長らく一緒にいるからこそそれはよく知ってるのだ。
己の不覚に一瞬ため息をつき、すぐさまに彼は指揮者の顔を取り戻した。まだ十分に間に合う。落ち込むなどという不合理は自分には許されていないし、そもそもそんなものは持ち合わせてもいない。
だが、募る怒りいらだちが僅かに口元にあふれ、彼は呪いの言葉を口にした。

『くそったれ、命を粗末にしやがって』

「てんちょー、今すげぇ死神らしくないことをぽろっと漏らしませんでしたかね。死神らしく、くくく無駄に命粗末にすることもあるまいにとか不敵に言って見せたらどうです」

『俺も相当奴ら側に毒されたか、長らく向こうにいすぎたようだ。
今中の連中に警戒を緩めぬよう言付けておいたが……やつ相手では時間稼ぎにしかなりそうにもない。これは俺が直接回るしかあるまい。
貴様の方はどうだ? ある程度壊滅させることに成功したら戻ってこい。どうにも胸騒ぎがする』

「了解です。奴さんの気配はしませんがもう少し切り開いてみることとしましょう」

ばらばらと遠巻きに煌びやかな機関砲の弾が何度も頬を掠めたり、あるいは着弾して弾き返されたりしている。距離はまばらに牽制の積りなのか、迫撃砲の嵐。ずいぶんと熱烈な歓迎を受けて彼女は凄惨な笑みを漏らした。
龍の装甲に近代兵器の類は全く歯が立たないというのに、まだしつこく浴びせかけてくれるではないか。まるで馬鹿の一つ覚えのように。
火薬飛び交う砲火点の中心で彼女はステージでも立つように大きく外套を広げて、その中から一粒の闇を取り出した。掌の上でそれが膨れあがる。漆黒の魔女水晶の奥底で炎が点り、やがて溢れんばかりの灼熱が集う頃にそれを指で風船をつつくみたいにして跳ね飛ばして浮遊を許すと、ぱんと弾けて四方を飲み込む爆炎と化した。
肉であろうと骨であろうと鉄であろうとただ関係なく焼き払い、命を吸って綺麗な蛍火が辺りを漂う。螺旋を描く業火はまさしく竜を思わせる動きで荒れ狂い、昇天していく。
悠々とその地獄絵図を突き進むにあたり、見知った顔とも出会う。

「わー……えげつないくらい簡単に焼き払ってくれたね。こりゃ骨肉どころか跡形もなく融解しちゃってるよ」

人の脂は焼けば独特の臭いが充満するものなのだが、龍のそれに当てられてはそれが出る余地もなく根本から殺菌消毒らしい。ロゼッタは見かねて臭いのしない死地で鼻を曲げ、同時に吹き荒れる爆炎の烈風に戦慄した。
地面には黒い焦げ痕しか残っていないときたもんだ。そこに物体がいたという影以外は、何もかも灰にすらならない。想像を絶する火力が過ぎ去った証拠だ。
次に歩み寄るリーゼロッテを見据え頭から足から、不思議そうに舐めまわすように何度も確認している。おそらくは分かれた際に龍の姿をとっていたからであろうか。彼女はようやく疑問を口に出した。

「"リーゼロッテ"なんだね、今は」

「伊達にわたしも二千年弱寝て過ごしていたわけでもありませんから、一応人間サイズで火力出せるように調整していたんですよ。
というかですね、本体だとどうにも巨大すぎて取り回しに欠けますし。不便極まりないんでこちらの方が消耗少なくて済みます」

「人間サイズで今みたいな大技繰り出せるのかよ……」

「あ、今のはジャブですジャブ。あんなのろい火球ひとつ捌き切れんで、貴重な魔力を大量消費する大技なんか誰が出してやるもんですか。
え、ロゼッタさん今のが結構マジだと? そんなはずありませんよねぇ、天下のエピタフィオンが、そんな初歩的な見間違いを」


「悪かったな見る目なくてさ!」

そうこうしているうちに駄弁る余裕もなくなってきたようだ。気がつけば取り囲むようにして死霊兵が展開されていた。命の概念がすでにない彼らに無茶無謀という言葉は通用しないから、なんとも果敢に吶喊してくれる。背合わせでにじり寄り、お互い髪が触れそうな至近に詰め寄るが、何も追い詰められたというわけではない。
ロゼッタは狙撃銃を背から引き抜き、片腕に一つずつ納めて振りかざした。踊るように旋回、華奢で小柄な体躯には似合わぬ長砲身がぎらりと光る。丁度いい玩具を見つけたというような、期待と嗜虐の目だ。
「に、し、ろ、は、と……うへー。十六体ってところか」 数えつつも物量に呆れるロゼッタに挑戦的ににやりと返した。


「では、ロゼッタさんお手並み拝見といきますか。何秒でやれます?」

「"秒"だと? 瞬き一つもあれば十分お釣りが返ってくるさ、舐めんなよ~!」

まさしくその一撃、否連撃は稲妻だった、と形容するべきか。
消えるように高速で姿勢を屈め擦り抜け、トリガーを引きつつ丈夫な砲身でなぎ払い骨を砕く。反転方向に踏み入れる瞬間に全身は一筋の光芒と化し蒼白い雷光は唸りを上げて目標物の間断を何十往復も引き裂き畳み掛け、数百の斬撃が一瞬で駆け抜け嵐を引き起こす。傍目からみれば時を同じくして何人もの達人に斬り入れられたような錯覚に捕らわれるだろう超高速戦闘を嗾け、訳も分からぬままにスライスされて瓦解する死霊を背に、彼女は再びふっと視認速度域にギアを入れ直した。

「おっと、飛ばし過ぎちゃったかな」

得意げに足下から砂煙を上げ颯爽と帰ってくる様は、南の荒野を一駆け終えた百獣の王のように。
重力なんぞ何のそのとばかりに腰元を浮かせて元の位置に落ち着いた。

「……なんか前より速くなってません? なんですか今の瞬殺劇」

「だから舐めるなっていったろう。あたしだって日々進化しているんだ。この加速はもう誰にも止められない」 にやりと邪悪に微笑むと八重歯が光り頬の紋様から雷光が散る。獣神化の侵蝕を極限まで受けながらも瀬戸際で食い止めることに慣れてきたらしい。久しく目視に耐えられない速度を見た。成程人間の中でも化け物に近いといわれるだけはあるようだ。

「暴走族みたいな言い分ですな……」

「ふふん、悔しかったら止めて見せるんだな。あたしは火力はそこそこだけどスピードは割と自信あるんでね……そら、新手が来たぞ」


自身の頭に向けられた数百メートル先の遠距離照準を半ば第六感で感知し、ロックオン・サイトからぶんと影だけ取り残して高速離脱、捕捉もままならぬうちに前衛に突っ込み、
蒼白い閃光が集う両手を振り下げ落雷を引き起こす。次第に戦力の密度が高くなってきた。此処が中枢部で間違いは無いらしい。矢のように飛び回りながらも冷静に戦場を俯瞰し捜索を試みる。敵は何処だ?ただの雑魚では無い、この戦の鍵を握る頭の部分は――?
千里眼の探索範囲を拡げ、同時に獣の聴力で無線を傍受する。どんなに精密に暗号化された回線も電子から分解し丸裸にしてしまう魔女の技術にはなすすべもない。
脳裏を飛び交う敵味方の信号を咀嚼し並列し、同時処理する。音波と電子化された映像が頭の中を駆け巡る。
ロゼッタは電子の中に自己を並列化させ、電子と一体化することでどんなに複雑化されたコードをも深淵で「理解」する。

「敵襲、敵襲! 目標正確に視認できません、高速で突破中!」

「博士の言う"エピタフィオン"か。まともに交戦することを禁ずる、各自その場に留まり戦線を維持することを第一とせよ!
小娘は取り合わなければただ暴れて通り過ぎていくだけだ、あっという間に灰になりたくなくば、いいな。交戦は控えろ」

「中佐、前線を突破してくる新たな敵影。映像解析、リストと照合中……完了。
警告、『死神』を捕捉。リーゼロッテ・メフィスタフェレル」

「敵本陣の副官が単身突撃だと?血迷ったか悪魔共め」

「過去の戦闘データ検索……該当せず。能力不明、術式形態不明。魂魄耐久度・及び所有数不明。唯一判明しているのは"物理的接触の無効化"――他未知数。
交戦者の生存率はほぼ零……余りにもデータが少なすぎます。ただ、先程A-7、T-39地区の部隊の最終報告は彼女との交戦でした。数手で機甲部隊を無力化するほどのなんらかの術式を備えているのは確かなようです」

「よし。各部隊実質的な戦闘を控え、機動兵器の撤退を開始。『死神』に対抗し得る戦力を投入しろ。足止めに効くかもしれん、弱体結界を散布。
敵の能力は未知数、確認判明次第逐次報告しろ。繰り返す、敵は未知数である」

「了解。K-11に展開しているニールを呼びよせます。T-3からW-19まで二段階後退。味方の退避を確認次第結界を散布開始。
死神に通常兵器はまるで役に立ちません。各自本格交戦は控え対応部隊を待ってください」

作戦指揮系統の命が出て数秒後、敵本体が速やかに後退する。まともに取り合う気は無いらしい。
死霊はともかく無駄に人間と交戦することも躊躇われるロゼッタとしては取り合うなという命令は願ってもない。弱体結界などというのはリーゼロッテ程の上級悪魔には通用しない。唯一気になるのは、死神に対抗し得る戦力という奴か。地上をのらりくらりと移動しながら火球を飛ばすリーゼロッテに向けて叫ぶ。
あらゆるものの貫通を許しはしない絶大な表面装甲と、龍以外に耐えきれるものは居ないとさえ言われる魔道出力。まるで東洋の「矛盾」を具体化させ輪郭を持たせたような存在、それが龍だ。そんな種族の切り札である彼女は、砲火の中も悠々と歩みを進めていた。戦場に怖いものなしと言わんばかりの堂々さだ。

「リーゼロッテ!」

「……敵が引いていますね。ふふん、対応が早くて結構。突っ込んでくるだけのバカよりも余程なぶり甲斐があります」

「悠長な事を言ってる場合か。奴ら何か繰り出してくる気だぞ……。何か来る前に叩き潰そう。カヴァー頼むよ龍神様!」

「待って! ……あー、もう。他人の話聞かねぇなぁあのお子様は!」

カヴァーを頼むと返事も聞かずに飛んでいったロゼッタの後を、致し方も無いので珍しく加速して追う。普段は「かったるい」からやらないが、羽根を伸ばせばいつもよりは素早く動ける。風を掴み、地上の磁気と反発させて身体を浮かし、空中を並行にすっ飛んで行けばもう立派なものだ。質量だけは隠しきれないので、魔力のコントロールで無理を押して飛ばすしかない。運悪くぶつかった奴は複雑骨折で病院送り確定である。
低空を加速するリーゼロッテは、空の雲の切れ目に一筋の煌めきを見つけた。それは段々に勢いを増し、角度から座標を推測する。狙いはこの戦場に定まっているらしい。それを即座に察し、敵軍中枢で暴れているロゼッタのもとへと向かった。周りにかまけて彼女はまだ気付いてはいなさそうだ。
光点はどんどん疾走を続けていき、果ては赤熱が地上からも確認できるくらいの大きさになった。轟々と地響きのような呻きまで聞こえる。地上で戦う連中も気が付いただろう。だが、直ぐに回避できるかというとそういうわけにはいかない。あれが着弾したら、どれだけの被害が出るだろう。隕石に近い速度で、地上に物体が激突したら、巻き上げられる砂塵と衝撃波だけで相当な被害が出るのは想像に難くない。力は出来るだけ温存したかったが、そうも言ってられないようだ。駆け寄ってすぐさま背面の援護につく。

「ロゼッタさん!」

「どうしたんだ追ってきたりして!」

「カヴァーしろって言ったのは貴方ですよ。それより、何か降ってきます。離脱した方が得策です」

「そうらしいね。敵の術式か? でも……逃げるわけにはいかなそうだ」 ギリと、拳と口が軋む音がした。どうやら本気のようだ。リーゼロッテは反論した。

「どうしてです? 分かり切った脅威を前にどうして回避しようとしないんです? それじゃただの愚者ですよ」

「愚者でも何でもいいさ。ただ、アレがもろに着弾してみろ。敵も味方もお陀仏だぞ。
くそ、何を考えてるんだ向こうの奴は……味方が巻き込まれるような巨大な殲滅術式を発動するなんて! これじゃ、ただの見境なしの殺戮劇だぞ」

「フランケンシュタインはそういう男です、良心を期待するだけ無駄でしょう。
しかし、そうですか。逃げないと。 ……全く手に負えねぇ餓鬼だ。そういうと思ってましたよ」

「悪かったなガキで!」




「ロゼッタさん、わたしから離れないでくださいね。何があっても、必ず」

光点はいよいよ加速を増し、後数十秒もしないうちにブチ当たりそうだ。直撃軌道のただなかで、リーゼロッテは立ち止り詠唱を開始した。最後に口から出た言葉は、真剣そのものだ。
詠唱に集中している彼女に降り注ぐ銃弾は甲高い音を上げ弾かれていく。彼女は何も言わないが、リーゼロッテはこの場に居る全員を助けるつもりだ。
そうでなくては、こんな大規模な術式を行使するために隙の多い詠唱をわざわざしまい。ひとり助かるつもりなら自分だけのために術を使う筈だ。彼女に向けられた銃弾を弾き落としながら、ロゼッタは叫んだ。
何処までも天の邪鬼で、誰よりも世話焼きで。そんな彼女を分かってやれるのは、今此処にひとりしかいない。



「撃つのを止めろっ! お前らの主は、お前らの命なんざ最初から勘定に入れていないみたいだぞ! 空を見ろ! さっさと銃を捨てて逃げろ、死にたいのか!」

「無駄です。此処に居る連中に思念波系の呪縛が掛かっています。わたしたちの足止めに彼らは死ぬまで戦い続けるでしょう。これが、あいつのやり方です」

「……くそっ、あたしには何も出来ないってのか」

「諦めるのは早いですよ。着弾の瞬間に、障壁を生成して衝撃波を喰いとめます。
ロゼッタさんはあの光球をその隙に弾き返してください。わたしのスクリーンごとで構いません」

「それって貴方がダメージを全部負うってことだろう。そんなことできるか」

「選択の余地はありません。それに……たかだか十七の小娘風情が龍を舐めるなよ」

「……!」

ロゼッタは言葉を失った。
そう言い放つ横顔に、一切の躊躇いもない。任せておけと言わんばかりの、頼もしげな気迫だ。全く不安を感じさせないそれは、はったりにも見えなかった。それほどに、実体が備わっている。彼女は表情をいつもの道化に戻して、「とまぁ、そういうことです」とにっこり笑った。不思議なものだ。その顔を見ているだけで、ロゼッタは元気が湧いてきた。何とかなる気がしてくる。

「……ったくもー! ミスったら承知しないぞ、『龍神』!」

「ふふっ、任せてください。どのみちしくじったらなかよくお陀仏ですもんね!」

迸らせる雷光を膨れさせて、空を穿つように睨む。いよいよ目前に迫った光球は空間に歪みを描きながら、驚くべき速度で肉薄した。
傍からでは蒼い空を貫き、光の矢が一直線に落ちてきたかのように見えるほどの殲滅術式。それが幾つもの環をかけながら、衝撃波に次ぐ衝撃波を打ち鳴らし、その炸裂する閃光と地を抉る爆発で、視界を奪い去った。響く轟音は遥か数km先の魔族の耳をも穿ち、ぴりぴりと頬を打つ衝撃だけを残して消えた。
まるで、人の持つ最大の業火だ――魔族たちはそう感じながら、爆心地をただ眺めるだけ。人もまた然りであった。目に見える全ての景色が赤焼けに染まっている。
死神店長もまた、根城とするバベルからそれが見えた。あたりの小鬼たちは聊かの不安を隠しきれないで口々に叫ぶ。

「ありゃあ、さすがの龍神様も助からないんじゃあ……」

「バカ! ザラキエル様の前でそんなことを言う奴があるか! 死にたくないなら黙っていろ!」

「ふん……」

「ザラキエル様?」

「あれしきの広範魔道殲滅弾の直撃で死ぬような部下を育てた覚えは無い」

「ひぃっ! そんな恐ろしい事を!」

「勘違いするな、奴はあの程度でくたばるようなタマでは無いということだ。今に見ていろ……龍など我々の尺度で測れる生物では無いということが良く分かる。
そら……起きあがってくるぞ」

死神店長の言葉通りに、爆心地にひとつ、蠢くものがあった。
黒い消し炭を蹴散らし灰の山を振り払う小さな影は、旋風を引き起こし一息に収束させていくとその姿を現す。バベルの中枢から死神はそれを確認すると、やれやれと肩をすくめた。俺の部下があの程度で死ぬはずは無いか、と安心するようでもあった。

「けほけほっ。くそ、なんて威力だ。リーゼロッテ、生きてるか!」

黒ずんだ灰燼があたりの視野を奪っているためか、ロクに前が見えないならをロゼッタは手探りで進む。先程の直撃での閃光で、暫くはまともに目も開けなさそうだ。
木霊響く耳が慣れてきたかと思えばあたりからは、悲鳴と呻き声と、苦痛に喘ぐ嘆きばかりが聞こえてくる。着弾の衝撃は……完全には防げなかったのか。こちらの障壁以上に、威力がけた違いだったのは言うまでもない。
目を、開きたくなかった。それでもいつかは開かなくてはいけない。そっと、恐る恐るロゼッタは瞳を開けた。あたりは地獄絵図と言わんばかりに、人々や魔族がまるで塵のように打ち捨てられている。衝撃波に手足をもがれ、或いは直撃の炎で黒焦げにされ。気絶しているのかこと切れているのかもわからないものもいる。そんな死屍累々とした、黒と灰とだけの世界の中心で、リーゼロッテは背を向けて立っているのを見て、彼女は思わず叫んだ。

「リーゼロッテ! これは……どういうことだ。あたしらは、しくじったのか……?
みんな苦しそうだ……あたしらには、何も出来なかったのかっ!」

「……ロゼッタさんを守るので精一杯でした。申し訳ありません」

ぐいと首根っこ、ローブの襟元を掴んで何度も揺さぶった。力なく、何度も何度も揺さぶった。彼女は顔を沈めたまま応えない。
分かっている。彼女は自分の命を守るためにかなりの魔力を浪費しただろう。責められる理由は何処にも無いのに。そうするほか無かった。
ボロボロになったローブの下から、赤い血が滴り落ちているのを何食わぬ顔で隠しているのが痛々しい。彼女はいつも、いつもそうだ。本当に大事な事は自分だけで背負って、何もかも責任も呵責も罪科も、自分だけ浴びていればそれでいいと思っている。なんて狡猾くて、哀しい女だろうか。
そんな彼女を責める他に接することが出来ない自分にも吐き気がする。ロゼッタは気がついたように腕を離し、そっと謝罪する。


「……ごめんよ。貴方にだって、辛い筈なのに」

「いや、謝ることは何も無いです。やるだけの事はやりました……これだけの被害で収まっただけでも、と言いたいですが……」

きっと彼女は空の向こうを睨みつけた。何か来る、そんな目だ。
そう感じ取った瞬間、空が裂けた。晴天の空の僅かな雲間を切り裂き、波紋を拡げてそれは現れた。

――あれは、天の使いか。それとも悪魔か。

それは流れ星を思わせる勢いで加速し地に叩きつけられ、爆炎を翻して姿を現している。着弾点から何者かは蹲った姿勢から上体を起こすと、八枚の翼を広げて風を劈いた。
リーゼロッテの双眸がそれを見据えて怒りに震える。見知っているような、そんな雰囲気だった。今まさしく敵も味方も関係無しに有象無象を蹴散らした輩が、自分の知っている人物と気付き、つじつまが合うと同時に込上げる気迫が髪を逆立て炎を点す。
目の前に落下してきたその人物は、まるで青年のような容姿だった。
橙に燃えるような髪と、蛇龍の如き双眸。全身からは空間を螺子曲げるほどの赤熱を纏い、それを外套のように翻して目の前に歩みを進めてくる。
リーゼロッテはそれを見て、一言漏らす。


「――ニール」

「え?」

「ファフニール・ジークフリート。まさか此処で出くわすとは、思いもよりませんでしたよ」

青年に、それは聴こえたのだろうか。リーゼロッテと目線が合い、何故か愉しそうに口を歪めた。
口が頬まで裂けそうなくらいに凄惨な笑みだ。慈悲や優しさなど微塵も感じられない、捕食者のそれだ、とロゼッタは思った。
そして青年は、他ならぬリーゼロッテに向け声を飛ばした。何十年も会っていない旧友を見つけたそれと変わらない、なつかしみに満ちた微笑みにすり替えて。
だがそれは何処か、見下したような傲慢さが含まれている。

「ニーズヘッグ、か。まだそんな悪趣味な恰好をしているのか?」

「人間の戦場のど真ん中に灼熱弾叩き落とすような奴に悪趣味などと言われたくありません」

「貴様、龍の矜持を忘れた訳では無かろう。
こんな、魔族やら人間などというのは……我らの前では等しく塵芥に過ぎぬ。ゴミを掃除して、何が悪い?
まさか、其処なゴミの生んだ餓鬼に情でも移ったか? ふん、木偶は所詮木偶だったということさな」

嘲笑う言葉に、今度はロゼッタが激昂した。戦場のど真ん中で殲滅魔法をぶちまけたことにも、人間をゴミ扱いしたことにも怒っている。
だがそれ以上に、彼女は親友が侮辱されたことが許せなかった。

「誰が……誰がゴミだと?
おい、龍だか蜥蜴だか知らないけどさ。冗談を言うのも大概にしろよ。今あたしは猛烈に怒ってるんだ。あんたらが思うほど人間は、ひどくないよ。
それと……リーゼロッテを今あんたは何と言った? あたしの親友を侮辱するようなら、良いだろう。あんたが誰だか知らんが、さぞ大層な御身分なんだろう。
だがそんなこと知らないね! 面ぁ寄こせよ、張っ倒して消し炭にしてやるよ」


「ロゼッタさん……」

「木偶は己が宿命を忘れ、木偶同士で傷を舐め合っていたということか。ふっ、こいつは滑稽だ」

「リーゼロッテをあんたみたいなボッチと一緒にするなよ。彼女は龍神様で、国を崩すくらいバカげた戦闘兵器だけど、
あたしの大事な友達で、人の痛みが分かって、成し遂げたい理想がある。あんたみたいな他人をゴミとして侮蔑しないと生きられないような柔な構造はしていないんだ!」

「――口の減らぬ猿だ。目障りだな。もういい、消えろ餓鬼」

ぼぅっと掌に炎が灯る。そうして、矢張りニール……ファフニールと呼ばれた青年は埃を払うような容易さで、業火を振りかざす。
一瞬で回避不能と分かるほどにそれは広域で、余りにも巨大だった。次々と空気が悲鳴を上げて消滅していく。ロゼッタの千里眼にそれは捉えられていても、完全に防御することは最早不可能と思われた。
その間断にリーゼロッテが割り込む。瞳から溢れる残光は本来の金色を棚引かせ、詠唱を開始する。

「リーゼロッテ!?」

「――出来れば使いたくなかったんですが、そうも言ってられないようですな」

パリン、彼女が掌を握りしめると何かの割れる音がした。
それが何か分かるまで数瞬を要したが、ロゼッタにはじきにそれが何なのかが予測がついた。リーゼロッテの身体が、これまでに無い覇気と魔力を伴って、翼が次第に肥大化していく。リミッターの類だ。彼女はそう思った。砕けてさらさらと手元から、小さな蒼い宝玉のピアスが零れ落ちていた。恐らくそれが、「鍵」だったのだろう。
目の前の炎の旋風を瀬戸際で地より呼び寄せた魔氷群集で防ぎ、相殺させる。そうして間断なく彼女は次の術式を行使しに掛かった。大型術式を召喚する時間的猶予はあるようだ。
両手に蒼い炎と紅い炎とを点し、頭の上でそれを融合させ、足元から制御術式となる文字列を召喚してコントロールする。放射する複雑な魔道文字列は螺旋を描いて地面からはがれていき、闇色に染まった火球の中に吸い込まれていく。
彼女自身も、溢れ出る無尽蔵のそれを完全に制御出来ている様には思えなかった。否、臨界を超えて無限に等しき出力を彼女は享受し、その全てを喰らい尽くさんとまでに貪欲に、全身に果てなき力を浴びながら、叫ぶ。あたりには生ある物全てを押し潰さんとばかりの超重の、鬼気迫る威圧が蔓延する。
限界まで膨れ上がった炎は、やがて彼女の頭上で槍とも楔とも取れぬ巨大十字架を形成し、牙を剥いた。

「黒よ、我を喰らいその真威を現世に現わせ――境を屠り神を貫け!
さぁ、もうどうなっても知りませんからね……! 第二滅界兵装"レーヴェンスレイヴ"発動――境界調和律制約解除。存分に狂い咲くがいいです。往け!」

十字架は応えたかにみえた。唸りを上げ、船舶の鋼鉄が軋むような不気味な音を立てながら、空中で姿勢を形成し文字通り矢のごとく「ファフニール」に食らいついた。
降り注ぎ分裂し、炸裂し闇は拡散した。閉じ込められた炎が堰を切って蔓延り、地を焼く。通った後には何も残さない無慈悲の灼熱は、
空間に歪をすら発生させ大きく視界を捻じ曲げてあらゆるものを「消滅」させてゆく。

「これが、龍の力か……!」

「いや、まだ浅かったみたいですね。これは……腕一本で済みましたか。やれやれ」

「同胞に牙を剥くとは……血迷ったかニーズヘッグ!」

煙が落ち着くとファフニールがうずくまっているのが見えた、あれだけの大型術式、禁呪の類を食らった後だ。どうやら左腕が根元から消し飛んだらしい。
怒りに震え、なおさらにその双眸は狂気に満ちている。龍本来の怒りとは、これほどなのかとロゼッタは畏怖する。
何者とも相容れぬといわんばかりの、ありとあらゆるものを拒絶する憤怒の感情が漏れ出でているようにすら思えた。彼の矜持は、今の一撃でボロボロだ。人間を一匹消そうとしたら同胞に深手を負わされたのだから。それでも、決してそれは折れることがないだろう。むしろ一層怒りにまかせて凶暴に猛攻を繰り出してくるに違いない。
リーゼロッテは、しかし全く余裕に満ちた蔑みの笑みを彼に向けて、まるでわたしが何かしましたかといわんばかりに挑発した。

「次は間違いなく心の臓を穿ちます。降参するなら今のうちですよ? ファフニール、あなたがいくら強力な純正種とはいえ改造種のわたしとやりあうのは――頭に血が上ったとはいえ少々愚策ではないですか」

「ぬかせ! 裏切り者に何を言われようとも響かぬわ。良いだろう、貴様は昔から目障りだった、いい機会じゃないか。今ここで消してやるぞ、出来損ない」

「聞く耳持たず、か……むしろわたしは何で貴方が、いや貴方ともあろうものが人間の肩を持っているのかが気にかかりまして」

「肩を持っている? 我が?」

あたりに響くほどに大きく彼は哄笑する。何がそんなにおもしろかったのか、気がふれたかのように笑い狂う彼に、リーゼロッテは怪訝そうに術式の予備出力を向けたままだ。


「なにがおかしいんです」

「そうか、我が人の、あのゴミどもの肩を持っていると。貴様にはそう映るのだな。貴様は何も知らないのか、つくづく哀れな木偶だ。
あの塔に何があるか知らないとみた。いいかニーズヘッグ、貴様が守っているものは――我らが悲願を成就するのに……なくてはならぬものなのだよ」

「…………」

「混沌の坩堝、バベルなどというものは所詮隠れ蓑に過ぎぬ。あの巨大な筒は……天界への結界を打ち破り、我らを解き放つ唯一の道。
何故上を向けて大きな穴が開いているか? あれは塔などではない。"ばかでかい砲台"なのだよ。
それを貴様は、後生大事に守っていたというわけだ。ハッ! 傑作だな!」

一閃。
今度は氷の矢が彼の胸を射抜いた。赤い血は吹き出、花弁のように彼の背面に拡がった。
だが……その一撃には間違いなく迷いが読み取れた。とどめを刺せなかったのだ、彼女は。
自分のやってきたことを否定され、揚句同胞には裏切り者とされ。彼女は、自分にもうどこにも居場所がないことは誰よりもよく知っているのに、そのうえただひとつ支えているものを叩き割られたような気がした。

「今からでも遅くないぞ、ニーズヘッグ。おとなしく我につくがいい。
そこな餓鬼を自分の手で灰にしてやったら、今までの狼藉も融通してやろう」

「なっ……!」

「…………」

残酷な提案。残酷な真実。残酷な決断。
彼女は、何を取るのだろう。ロゼッタにはそれ全く読めなかった。敵になってほしくはない。だが彼女の痛みは、わかっているつもりだった。
二千年もの孤独と過酷な戦いが、選択次第では水泡に帰し、選択次第では報われるものになる。だから、ただ単純に裏切るななどと、軽々しく言えたものか。言えるはずがあるまい。
何よりも決断するのは――彼女だ。
ロゼッタは敢えて、突き放すように。

「――行けよ」

「ロゼッタさん……」

「まぁ、最初からこんなこったろうと思ってたけどね。全く、これだから龍ってやつは信用できないね。
まぁ、リーゼロッテ、貴方が居なくともあたしの野望は何とかなる。貴方もそれは同じだ。むしろ最後敵対するくらいなら、早いうちに決着をつけてしまった方がいいんじゃないか?
あたしらは最初から敵同士だ、その関係が元に戻っただけだ」


「フン、ゴミの餓鬼の癖に頭の周りは早いようだ。泣かせてくれるなぁ? ああいっているぞ、さぁどうする?」

「わたしは――」

わたしは、わたしは。
彼女の何なのだろう。
どうしてこんなにも迷うことがあるのだろう。何の意味もなさないたった一人と、これまでの過去を天秤にかけてしまっている自分がいる。
わたしは彼女の敵で、口喧嘩仲間で、将来の戦線を誓いあった戦友で、それでもやっぱり最後は殺し合わなくてはならない仲で。
わたしは龍神で、彼女は対極に位置する魔女で、それでも一度は理解し合えた――
友達、そう形容していいのだろうか。

二千年と少し生きてきて、そんなことを考えたのは不思議と初めてだった。
友達、そんなものは人間と人間の間に発生する、軟弱な感情だと、気休めにしかすぎぬと。
だが、そうだとすればこの感情は、彼女を殺したくない、彼女から離れたくないという気持ちは、ただの錯覚なのだろうか。
わたしは――とうに龍としての心を失ってしまったのではないか。
わたしは……一体どうなってしまったんだ。


少しずつ、彼女に歩み寄る。右手に宿した氷は、刃物のように鋭利にぎらついている。
まっすぐ、ロゼッタの顔を覗き込んだ――双眸は、驚くほどにしっかりと見据えている。まるで、どう出るかを試しているようで――その実、どっちにつくか分かっていると言わんばかりに、揺るぎの無い焔が灯っている。
そうして彼女の、曇りなく真摯な言葉が空間を穿った。

「さぁ……決着をつけようじゃないか」

「……そうですね」


ようやっと分かった。
わたしはこの人を、そしてわたし自身の人生を、どうしたいのかが。
この手に宿す力は――何がために振るわれるべきなのかが。
わたしは、どうして今ここにいるのかが。






――氷が、心の臓を貫いた。
赤い血飛沫が放射し、白銀が肉体を引き裂いて背中から飛び出、放射の赤で地を満たした。
貫かれたものはがっくりと膝を突き、胸にぽっかりと空いた穴を抑えながら慟哭する。

「――ニーズヘッグ、貴様っ……!!」


放たれた氷は……ロゼッタを掠め、その向こうに居るファフニールへと突き刺さったことに、貫かれた当人は、全く理解が出来ていないようだった。
どうして、悲願を投げ捨ててまで小娘ひとりの命を取る? 龍は同胞のことだけを考えて行動すればいいのにもかかわらず。
何処まで、この木偶は龍の矜持を穢せば済むというのだ。

対照的に、当のリーゼロッテは至って堂々とにらみ返す。わたしは矜持を守った、これでよかったんだ……双眸は迷いなき光を帯びて、そう言っているように煌めいている。
極めて冷淡に。悪魔の微笑みを添えて言い放つ。

「次は心の臓を穿つ、そう警告した筈ですよ。ファフニール」

「貴様はっ……この期に及んで、何もかもっ……棒に振るというのか!? バカな! 貴様を生みだした先代を、貴様のために紡がれた命を、歴史を、何だと思っている……!」

「いやー、いい話を聞かせて頂きました。成程バベルはただの塔では無い。だが……貴方方について、悲願が成就される保証もない。
わざわざそんなもののために、ロゼッタさんをブチ殺すなんて、余りに勿体ないじゃないですか? わたしってば結構慎重派なんですよねー、こう見えて。
それだったら……情報を引き出すだけ引きだして、此処で貴方を抹殺して? 何もかも終わったら神を屠る。そっちの方が遥かに『合理的』ですよ。
こんな簡単な計算も出来ないほど鈍りましたか。老化の進行著しいですねぇ……なんなら今此処で臨終迎えさせてあげます!」


「ええい、何処までも下種な輩よ……! 貴様は龍の最大の汚点だ。貴様は我らには要らぬ。良いだろう、望み通り此処で地獄に叩き送ってやろうぞ!」

「なーんか寝ぼけたこと言ってますねぇ。地獄なんてとうに見飽きたんですよ!」


猛烈な熱波が駆け巡った。怒りで増幅された赤熱の魔力はファフニールの掌に収束され、圧縮され陣を描いて放射されるが、リーゼロッテはそれを往なす様に氷柱を地面から迸らせる。
堅固な障壁に痺れを切らしたのか、今度は火球が飛んでくると防御が完全でない事を悟った彼女はロゼッタの肩を掴んで、抱きしめるように庇い立てた。焔が彼女を容赦なく焼く。
想像を絶する光景だ。焔も氷も、等しく衝突し対消滅し合う。其処に温度や優劣などといった概念は無く、等しく己が力の媒体でしかない。空気は双方がぶつかるたびに揺れ、悲鳴を上げ、消失していく。
ロゼッタも応戦し雷球を飛ばしてみるが、所詮は普段より牽制の役割しか果たさないものだ。吸い込まれてしまって、それきり。余りに火力の桁が違いすぎる。
接近戦での収束は得意技だが、濃縮して飛ばすとなると勝手が違う。そもそもこの二人は、その過程すら必要としていないようだ。火力を抑える必要が無く、浪費していても底がまるで見えない。魔力の永久機関とも言うべき、生物の限界を超越した個体。有り余る力はただ叩きつけるだけで意味を為し、其処に技術や節制といった制約の介在を決して許しはしない。術式と術式、力と力をただぶつけるだけの、恐ろしく原始的で野蛮な戦いだ。だがそれすらも彼らの手に掛かれば芸術的な紅と蒼の螺旋を紡ぎだす。中枢で二つの相反する魔法が凌ぎ合い、幻想的な輝きを乱反射させて映しだしていた。

「くそっ、魔龍だけあってすごい威圧だ……! リーゼロッテ、勝算はあるのか!?」

「……さぁ、どうでしょうね。でも、押し負けるつもりは微塵もありません。わたしは……本当に守りたいものが、真に成し遂げたいことが、今ようやく見えた気がしたんです。此処で棒に振るような、間抜けじゃあないんでね……さぁ、ケリをつけましょうかファフニール。こんなにもマジになるのは、随分と久方振りですよ。地獄の底で後悔に塗れ朽果てろ。いや、もう何も考えなくていい。貴様は灰にすら、もう成り下がることは無い。
滅界兵装第一種術式稼動――対龍殲滅駆逐魔道式の展開を開始――移行確認。"敵個体存在消失その瞬間まで魔道制約全解除・全出力解放"――承認。神殺し『ニーズヘッグ』始動」

のしかかるような闇が、何処からか舞い降りた。
彼女の言葉と共に現れたそれは、冥府の底よりも深く世界を蝕んでゆく。視野が、ロゼッタは錯覚のように思えた。"世界が色を失ってゆく"――闇に蝕まれた空間からまるでモノクロのように、有象無象の色素と生気を吸い取られて朽ち果てていくのが見える。彼女の呼び覚ましたモノは、本来この世界にあってはならぬものなのだろう。巻き込まれたら最後、自分も何処に行くか、死ぬのかそれとも消えるのかすらも、理解の埒外にあるように思えた。足が動かない。恐怖が体を完全に緊縛してしまっている。
その中枢で色素を吸ってなお拡大する深淵の闇は、大きく膨れ今にも弾け飛びそうだ。白と黒の雷光が迸りながら臨界を示唆しているが、彼女は注力を全く止めない。
何よりもどす黒く、悪という定義すらも嘲りそうな"無"色純粋な殺意を携え、彼女はにやりと微笑んだ。闇の塊は次第に形を取っていき、彼女はそれに吸い込まれていく。
影が、形が。彼女を仮初めの肉体から、この世に在ってはならないものへと真の変化を遂げさせている。


一匹の龍が、其処にはいた。
それは実体というべきものを持っておらず。身の丈が天を突きそうであっても、その身体は高圧のエネルギー体、否、その表現も聊か的を外れていた。
何せ、其処には「無」しかないのだ。龍の形を取った、ブラックホールとも言うべき終焉の高位。触れるもの全てを突き崩し、何処へとともとれぬ永劫へと葬り去る虚無への誘い。
ファフニールの放つ獄炎の隕石ですら、ものともせずに衝撃波ごと吸収し、そして無効化してしまう。ロゼッタはこのときに、自分が盛大な虚偽を吐かれていたことを知る。
効く効かないの問題では無い。端から、彼女には何も通用しないのだ。そもそも存在自体がこの世で何者の干渉も受けぬものだとしたら、最初から勝負は決まっている。何処まで意地が悪いのだろう。彼女は最初から、何も失うことは無いのに。敢えて同次元に身を置くことで、この世界に居る全ての者に合わせている。何処まで道化なのやら、何処までが傍観者のつもりなのやら。彼女にとってみればこの世界の全てが、戯れに過ぎないことを意味していた。ファフニールは手を打ち尽くしたのか、攻勢を止めて舌を打つ。

「本性を現しおったな、化け物めが……!」

「まだやりますか? 生憎と、弱いもの虐めは好きじゃないんですよねー。まぁ、まだまだ暴れ足りないから、全然オッケー、ですよ?」

「ふん、完全な虚構体の貴様と手ぶらでやり合うほど我は愚かでは無い。今回は命拾いしたなニーズヘッグ。だが、覚えておけ。貴様の生きる世界は最早――我々と相容れぬ。貴様は最初から異端であったが……今まさに、我らの世界から踏み外した。
二度と、戻れると思うな」




ファフニールはそう意味深に言い残し、焔に消えて影も形も残らなくなった。脅威が去り、人間たちも散り散りになった今に、リーゼロッテは大きな役割を果たしたことを悟った。能力を解除し再び封印、いつもの小娘の小さな義体へと還る。魔力の消耗が激しい。安心した所為か、或いはヤキが回ったか。彼女はふらっと倒れ込んでしまった。

「リーゼロッテ!?」

ロゼッタが駆け寄る。冷たくなった手を握る。鼓動がじきに、弱々しい打ち方になっていく。そんなバカな。彼女は不死の存在なのに。
吐息から生気が空に抜けていくようだった。彼女から魂の蠢きが感じられなくなっているのが信じられなかった。こんなところで死ぬようなタマではないはずだと信じていたのに。まさか、相次ぐ大型術式の連続行使とダメージで本当に全力を使い切ってしまったのか。

「あー、終わった……。 わたしとしたことが、少々、疲れましたよ……ちょっとだけ眠らせて下さい」

「バカ言うなぁ! まだ何にも終わって無いだろ! あたしを置いてく気か!? ふざけるなよ、こんなところで、終わる貴方じゃないだろ!」

「……自分の終わりくらい、自分が良く分かっています。わたしは、貴方が、初めての、友達が守れたから、それで――」

「もう喋るな……ダメだ。逝っちゃダメだ! まだ、あたしは、借りも返してないのに……こらぁっ、起きろよ……あたしは、貴方に死んでほしくなんかないんだよ……!」

信じられなかった。信じたくなかった。徐々に鼓動を失っていくのが。彼女の目がゆっくりと光を失っていくのが。
いつも明るかったから、バカみたいに道化の如くふるまっているから。自信満々に、敵を蹴散らしていくから。絶対に死なないものだと、そう思いこんでいた。
彼女も……どんなに強かろうが生物なのだ。それを思い出さざるを得なかった。それでもやっぱり、認めたくなかった。
リーゼロッテはか細い声で呟いた。かすれそうなくらい小さい。彼女のいつもの姿からは想像も出来ない。
夢であってほしい、これほど願ったことは無かった。

「ロゼッタさん……わたしは、貴方の佳き友でいられましたかね……ふふっ……」

「ああそうだとも。だからさ、まだまだ一杯貴方のことが知りたいのに。なんで、なんで……」

リーゼロッテは頬にそっと手を当てる。冷たい、小さなそれは、龍のものとは思えない程に優しい。
少しずつ、矢張り力が抜けていく。後何秒くらいだろう。永遠に過ぎ去ってほしくない時間だと、ロゼッタは人生で初めてそう感じた。
それでも――時は残酷で、平等で。彼女の死を、早くもせず遅くもせず。ただ刻ませてゆく。大粒の涙が彼女の頬を穿つ。

「いいんですよ。これで、良かった。 わたしは、最期に守るものが、きちんと守れたから。わたしはきっと、この時のために生きてきたんだなぁって。
こんなこと、二千年生きてきて、一度も無かった。ロゼッタさんに会えて、毎日バカにしたりして、本当に楽しかったなぁ」

「これからも毎日バカにしてくれていいよ。貴方がいないと、毎日退屈だろっ……だから、死なないでよ……過去形にしないでよ……」

「最期に一つ、いいですか?」

「……最期とか言わないで」

「ロゼッタさんは、わたしのことが……嫌いでしたか。
こんなウソつきで、最低で、反則臭い強さで、それでも結局何も出来ない――憐れな龍を」

「何を言ってるんだ。嫌いな筈無い……大好きだよ。友達だ。
みんな含めて、リーゼロッテだろ。貴方自分で、そう言ってたじゃないか。どちらも結局、本当の自分だって……リーゼロッテ、死んじゃ嫌だよ……!」

強く抱きしめた。
冷たくなっていくのが止まらない。それでも。そうせざるを得なかった。あたりには誰も居ない。ただ大きな、地面が抉れた跡が残っているだけの世界で。
たった二人だけの世界を、砂埃が撫でる。彼女の命の灯火を吹き消すように。

「それを聞いて……ちょっとだけ安心しました。
あはは、こんなバッドエンドも、たまにはいいかなぁ……親友に抱かれてそのまま死ねるなんて、わたしも意外と果報者だなぁ……。
それじゃ、今ひとたびの、お別れですね……」

「お休み……ロゼッタさん……」


彼女は瞼を閉じて、深い眠りへとついた。

……どれ程彼女の亡骸を、抱えていただろう。目を醒ましてくれない。本当に、眠る様に幸せそうな顔をして。何処までおめでたい人なんだ。他人の心配なんか、目もくれずに逝っちゃって。残された奴の事なんか、何にも考えずに。

暫くそうやって抱えて跪いて、どれくらい経ったか分からないころに、ガーゴイルを従えて死神店長がやってきた。
あたりの敵は完全に掃討し、そうでないものは姿を消した。リーゼロッテに辛うじて生を救われたものも多かったのだろう。驚くほど素早く、彼らはその場所から撤退を開始した。動けないものを担いで、ゆらゆらと消えていった。
部下の亡骸を見て、店長は何と思っただろう。信じられなかったのは無理もない。絶対に死なない筈の、絶対に世話がいらない部下のはずだったのに。よりにもよって自分より先に逝くなんてことが、彼に信じられただろうか。
信頼し切ったが故の悲しみだろうか。彼は、そっと口を開いた。

「エピタフィオン……」

「ごめんね店長さん。彼女、止められなかった……」

「もう、いい。いいんだ。そいつをそっと、地面に降ろせ」

「うん……」

砂埃をかきあげて、彼女の亡骸が地面に降ろされた。死神店長はそれを黙って見下ろしている。ようやく、彼女の死を受け止め始めたのだろう。そうして――

「……いつまで寝とるんだバカたれが。とっとと目を醒ませ」

 
 
 
 
 
 
脇腹を思いっきり蹴り飛ばした。

 
 

 



「店長さん!? 一体何を――!」

「いーってぇー!」

「リーゼロッテ!?」

「うわわ、鳩尾が。肋骨折れた。いてて。ちくしょー」

「リーゼロッテ! 生き返った! 心配させてもう!」

「エピタフィオンよ、騙されるな。
この小娘は邪龍ぞ。おまけに死神でついでに神殺しだ。そんな化け物がただの消耗でくたばる筈があるまい。忘れたか」

「あっ……。 で、でででも確かに脈が!」

「全身が龍から死神に変異し直しているんだ。冷たくなるし脈なんかあるか!」

「で、でも魂も無かった!」

「あー、おい小娘。貴様"一回死んだ"のか」

「え、はい。一死しました。全く不覚です」

いててと頭と腹を押さえて起きあがるリーゼロッテは、健全そのものだ。生き返ったといわんばかりの溌剌さ――店長はそれを見て呆れるばかり。
「全く、今際の際にすらサボろうとするとは……」 それにしても一回死んだとは死神なりの形容なのだろうか、意図を飲み込めずぽかんとするロゼッタに死神店長は説明した。


「我々死神に生も死も無い。ただ、奴は龍へと変異出来る。
龍の際に超過ダメージや極度の魔力消耗があった場合――まぁ早い話が一応生物だから一応は死ぬんだな。ただ奴は――」

「魂が幾つかある」

「へっ?」

あんぐりとロゼッタは顎をすっ飛ばした。魂が複数ある? そんな話聞いたことが無い。精々伝承の中の化け物だけだ。
肝心な事を忘れていた、彼女はまさしくその伝承の中の化け物だった。
「貴様ら魂が一つの人間が不思議に思うのも無理は無いな」 死神店長は肩をすくめた。

「高位の存在になればなるほど、一度や二度死んでもいいようにある程度魂を複数所持する奴が出てくる。死へのリスクを極力減らすわけだ、ぶっ飛んだ改造魔術でな。
肉体を超過するダメージを受けても再生できるように、予想外の敵と会敵した際の保険だな。これは野菜のように自分で増やして生育させる奴もいれば、他人から奪った奴を自分のものにする輩まで様々だ。そして魂が肉体から離れた際に、自動的に時間が立てば肉体に魂を再注入して復活出来るようにしている。これが化け物が化け物たるゆえんだろう」

「うわー。また反則臭い能力だなそれー!」

「当たり前だ。魔族の中でも割と裏技にひとしいんだぞ。そうおいそれと死んでたまるか。
おい小娘! 貴様の"残機"は両手両足で数えきれないくらい有ったな!?」

「19822です。ああいや、今久しぶりに一つ消耗しましたね。19821ですか」

「どっからそんな持ってくるんだこの化け物!」

「……大方ラグナロク戦争でかき集めてきた奴だろう。スナルエータ戦線でのこいつの暴れ振りは未来永劫比肩する生物などいない。
人も神の尖兵、天使も悪魔も問答無用で皆殺しだ。地上で散々暴れまくってその後挙句天界に喧嘩売って、全くあの時はひどく世話を焼かされた。
人間界の死者が4万弱、天界の天使が約3万だったか?」

「ついでに悪魔が6691体だったかな。ちぃーと吸血鬼を何匹かブッ殺し損ねたくらいで、大体あってる筈。元から戦闘目的の輩が多いんで、あいつら頑丈すぎます。
人間は――途中から数えるの止めました。ぷちって死ぬんで、あれ」

「全くふざけんな! 人間界魔界全土で恨まれる訳だよ!」

「当然天界でもトップクラスのお尋ね者だ。そんなわけで貴様の魂はもう何度も何度も殺しても間に合わんくらいに膨れているとそういうことだな」

「――まぁある程度補充したかったんで、死神業で横領したのも幾つかあるんですけどね。むしろそのために死神に化けてたり……」

「……このくそったれっ……ロスト分は貴様の仕業か……どうせそんなもんだと思っていたさ!」

咄嗟に殴りかかろうとする死神店長をロゼッタは腕を掴んで止める。リーゼロッテはいつも通りに、横になったままけらけらと邪悪な笑みを携えていた。
自分の仕事がこんな形で阻害されていたとは、全く堕天使にも見通せないこともあるものだ。こんな部下を持ったことを呪いつつも、またこんな部下でなければこの局面は乗り越えられなかっただろう。それらを含めて、彼女はいい意味でも悪い意味でも、此処に欠かせない存在ではある。
「それにしたって……」 ロゼッタは言葉を紡いだ。 「どうして死んだふりなんかしたんだ? 本当に、心配したじゃないか」

「ああ、あれですか」 何事もなかったかのように含み笑いを絶やすことはなく、至極当然とばかりに答えてしまった。 「ロゼッタさんの本音が聞きたかったんです」

「……また試したのか!」

「そう怖い顔しないで下さいよ。でも、ふふん……そうですか、大好きですか。意外とわたしも捨てたもんじゃないですね」

至って満足そうにそう言い放って鼻を鳴らす。 「かなり無理やりな悲劇捏造だな小娘よ」 死神店長はもうあきれて頭を抱えるばかりだ。いつも通りの光景に、いつも通りの二人に戻りつつある。
ロゼッタにはその仕方のない関係がとてもまぶしいものに見えた。長年連れ添った、恋人とか夫婦とかではなく、仕事仲間なのだろうけれど。
なんだか、夫婦漫才のようにも。

「でも、あそこでキスしてもらえれば、かなーり完璧だったんですが」

「なっ!」 赤熱がロゼッタの小さな頭からぼふんと煙を立てて上がった。なんてこった。またもやそっちの人認定が深まりつつある。

「眠り姫とかいう話もありますし? 接吻で目覚めたら劇的じゃないですか?」

「それ眠れる森のなんとかな」 店長からすかさず突込みが入る。

「細かいことはいーの! だってそうしたら既成事実でっち上げられるわけですし、せっかく告白してくれたんだからそういうのもありだと思ったんですがね。
ああッ、そうしたらわたしとロゼッタさんとカーラさんでどろどろの三角関係がっ! 既成事実と募る二つの想いの狭間で揺れるロゼッタさん! 愛と憎しみと、友情の青春劇!」

「生産性のかけらもないひどい三角関係だ……しかもまるで青春していない」

「女三人って幾らなんでもあたしそこまで真性じゃねーぞ」

(この小娘も否定しなくなったな……)

二人の冷ややかな眼差しもいざ知らず、妄想の海に舵を向け一人漕ぎ出しているリーゼロッテはくるくる踊る。「別に、店長でも良かったのですよ?」

「俺が貴様の前に立っていたら十中八九龍殺しを叩き込んで止めをさしてやったわ」

「あれれ? やりますか店長。 店長殺しても殺しても全然死なないから喧嘩相手には丁度いいですねぇ……!」

「貴方たち、なんだか割と仲いいね……」

長寿な彼ら特有の人生謳歌の秘訣なのか、殺しても殺しても死なないなどという一般常識を超越したやりとりを定期的に交わしているらしい二人は一人類から見れば遥かに理解の範疇外だ。化け物だ魔女だと言われても彼らには敵わない。ロゼッタからしてみれば、彼らの方がよっぽど構造が違うものだ。
しかしまぁ、人間界の知り合いにもそんなやりとりを毎度交わしている連中がいるわけで、張り合いの無い人生よりはよっぽどましなのかとも思ってしまうあたりは、
すっかり「此方側の思想」に染まっている自分に聊か辟易するばかり。
それにしても、なんだって彼らはそんな明らかに需要を超過した魂を保有するのだろう。自身の魂魄に分体を設けるのであれば、世界の魂魄数に圧迫を重ねることも無い。
ただそれでも、明らかに魔界法ぶっちぎりの規約違反である。そこまでして――勿論彼らにはそんな重みも為さないのだろが――保険を追及する理由とはなんだろうか。
ただ死ななくていいならば、十個二十個合って足らない筈はあるまい。
気がつけばそんな疑問を口に出していた。

「魂そんなに持ってて一体何に使うんだ?」

「ああ、これは――」 リーゼロッテは言葉を詰まらせた。もう言ってもいいものかなと思い直したのか、やがて言葉を続けた。思いがけない一言であった。

「神と戦うのに、準備過剰ってことはありませんのでね」

「一万二万あっても足りないんだ……」

「店長は足りると思います?」

「まぁ有るに越したことは無い。何度くたばったか俺は数えていないものでな」

神と戦い、そしてあろうことか生きて地に堕ちた死神店長こと元大天使、ザラキエルは不敵に笑う。
天使や死神に死ぬことは無い、と彼は言うが、相手が相手だけにそうも言っていられないのだろう。自分たちを生みだした創造主を斃そうというのだから、弱点把握や殺されは上等といった様相だ。戦いはこの世界の何処を見ても霞んでしまうほど苛烈を極まる。況してや一介の人間などに――それが背負えたものだろうか。
彼女は、たった三人でその相手に喧嘩を再び売ろうというのだ。傲岸不遜、神をも恐れぬとはこのことだった。

「奴らの元の総数は――301,655,722体。
こいつは人間界の大昔の学者が持ってきた数字だが、強ち間違ってはいない。勿論戦える奴は一握りだし全員を相手にすることもないだろう。
まぁくたばったり離反した奴もいる、実際はかなり少ないだろうな」

「はっはーっ、成程。要はひとりあたま一億体やれば釣りがきますね」

「アークエンジェル、俗に言うヒエラルヒー最高位の天使は――ひとり欠けて後六人いる。
問題はそやつらさな――まぁ、そこな龍神が本気さえ出せば物の数ではない。こいつばかりは奴――神の勘定の外、完全にジョーカーの立ち位置だ」


「欠けたひとりって誰のことでしょうねぇ店長!? おい目を逸らさないでくださいよ、死を司る大天使さぁーん?」

「さぁな!」

指折りつつ計算するロゼッタに、一つの疑問が浮かんだ。本当にザラキエルも込みで三人でやるつもりのようだというのは後にして、随分と恐ろしいことを言っている。

「ん、ちょっと待てよ。ただの人間のあたしに一億やれと!?
あたしは貴方達みたく蘇生も出来ないし、あんまり強く――あくまで貴方達と比べたらな!――ないぞ!」

「その時は龍神が二億やればいい。任せた」

「おい待てや店長。飲み屋の勘定じゃないんだぞ。わたしらは何に喧嘩売ってるか自覚してるんですか?」

「……飲み屋の勘定と違うのか?」

「もういいや。ロゼッタさん、ひとりあたま一億割り勘で。そんなんでおっけー?」

神を敵に回す。それもたった三人で。
だというのに、何と軽い人たちだろう。正確には既にヒトですらない。龍神の生み出した史上最悪の兵器「神殺し」と、神を裏切った元大天使の現死神。其処にぽつんと、ちょっと強い人間がひとり。
桁が違いすぎてバカバカしくなってくる。そして彼らは、一度挫かれたもの、世界から弾かれたものという共通点がある。ロゼッタは――少しだけ自分と比べたが、すぐにその考えを放棄した。必要とされなかったからなんだ。彼らの生き方そのものが大きくそう叫んでいる気がして、自分が口にするのも、仲間扱いしてしまうのも、かえっておかしなことに気付く。
それはとても崇高で、とてもバカバカしくて、そして自らの命運と何千年もの星霜を背負っていようとも、決してそれを表に出すことの無い。
そう、まるで飲み屋の勘定のように――至極簡単に彼らは決めてしまうのだ。負けることなど殊更に考えていない。絶対に勝つつもりでやる。それがどんなに険しく、想像を絶する壁が立ちふさがろうとも。

なんとバカみたいな人たちなのだろう。
なんと前向きで、途方もないほどに強い人たちなのだろう。
自分とは違う、これが――まさしく真に悪魔としての生き方なのだろうか。だとしたら、なんと羨ましいことだろうか。

彼らはどんなに重いものを背負っても決してそれを口にすること無く、笑ってみせる。それは強がりでは無い。軽んじているわけでもない。長い長い生の中で、真に為すべきことは、うじうじ考えても仕方の無いことだと知っているからだ。人間もこう簡単にいけば、どれだけの人が自殺を食い止め、日常に諦めを感じずして生きていけるだろうか。楽しそうな人生になりそうだ。
ロゼッタはうつむいていた。続ける言葉も、見せる顔も無い気がしてしまっていた。

「ロゼッタさん?」

「また泣かしたのか」

「ちょ、人聞き悪い。ああ龍聞きか。ん、でも聞くのは人だから、人聞きでいいのかな」

「また鳴かしたのか」

「おい店長、セクハラで訴えますよ! 訴えて勝つよ!」

「いいだろう、魔女裁判と行きたいところだが肝心の魔女が泣いている。泣く魔女、がきんちょは裁判にかけられぬ」

「……もうっ、なんで貴方達は、そう、無駄に元気なのかな……!」


顔を上げた。笑い泣きが止まらない。何処までもバカバカしいけれど、理想的な生き方だ。
くだらない事で悩んでいる自分までついでにバカバカしくなってくる。そうして思う。こんな変な人たちに出会えて、本当によかった。
死神店長は何が何だかさっぱり分からぬまま、けろりとして応えた。

「……? まぁ、人生長いからな。楽しくやらねば。そうだろうリーゼロッテ」

「そうですね。まだまだ若いんですから、考えてもはじまりませんや。
考えることは停滞ではないけれど、人はいつか進まねばなりません。それがどんな道であろうと、生きている以上は進まねば始まらない。
足を持ちあげ、一歩踏みしめて、人生を彩る生命に感謝し、そうしてバカなことに耽って、辛いこともやって、疲れて寝る。それくらいで丁度いいんです。
だからロゼッタさん、何だってそんなに泣いているんですか。そんなにバカバカしいですか。アホらしいですか」

「――此処が魔界で、貴方達が人間じゃないってこと、すっかり忘れてた」

目許をくしゃくしゃにしながら、辛うじて言葉にする。
リーゼロッテは死神店長と見合わせた。やれやれと言わんばかりの溜息。
そうしてそれを見据え、もう一度罵倒する。

「まったく、本当に馬鹿げてるんだから」

「……何があったんだか知らんが、笑っているようで何よりだ」

「店長、店長バカバカしいですって。たかだか十七の小娘になじられてますよ。ほらほら」

「貴様も言葉が減らないな。やっぱりひとりで三億やるか? ん?」

「おほほっ、ぜーんぜん構いませんよ! 三億対一、ですか。出来るところまで皆殺しにしてやろうじゃないですか。なんとかブックっていう人間界の臨界記録に挑戦です! ついでに人類の総人口も削ってやりましょう! 最近食糧問題とか世論が五月蝿いですからね!」


「リーゼロッテ! ザラキエルさん!」

「はいっ」「なんだ」

声を急に振り絞ったので、二人とも吃驚して萎縮している。こういうこともあるものかと思う。この世界に最早恐れる物が無い二人がビビるなんて、滅多に見られない光景だろう。
ちょっとだけ、笑い泣きの雫が飛んでいった。きちんと前を向いて、しっかり二人をその眼で捉えて。

「"神殺し"、頑張ろうね」

「ふん、体の良い暇潰しだ。上等だよ人間。貴様らの底なしの力を見せつけてやれ、玉座でふんぞり返っている奴にな」

「へへっ、三人いれば三億人力です。このぶっ壊れた世界で、何よりもぶっ飛んだ計画。完成させてやろうじゃないですか」

戦乱のど真ん中、戦いの風が吹き抜けたその地で、桃園の誓いならぬ、神殺しの誓いを立てる。
何時になるか分からない、そもそも勝てる見込みもあるのかすらも知れない。最初からそんなものは無く、ただ無茶苦茶な目標を掲げてしまっているだけかもしれない。
それでも、この二人は、何処までも本気で、絶対に成し遂げるつもりで、しかも「ただの人間」に、それを一緒にやろうと、真面目になって持ちかけるような連中だ。
その気になれば、どんな無茶難題であろうと、彼らの前にはまるで意味を為さない。そんな、バカバカしいほどにぶっ飛んでる、そういう人たちなのだ。
そんな中に自分が入れることが、どんなに可笑しいことか。どんなに頼もしいことか。どんなに――誇り高いことか。
一つの目標の元に、集い、戦い、そして勝つ。 例え人と魔と龍の垣根があろうとも、最早そんなものは障壁ですらない。
世界を回すのは、こういうバカげた、何もかも吹き飛ばしていくくらい強引な力なのかも知れない。
そして、もしかしたら自分の本当の居場所というのも――此処なのかも。


「それにしても――」

「どうした?」

「身近な処に、そんな天界の反逆者二名なんて超大物がいたとはね。全く出会いって奴はいつも気まぐれだ」

「俺も自分の店で天界史上最悪のお尋ね者がジャガイモの皮剥いてるなどと思いもよらなかったぞ」

「わたしもこんながきんちょが大それたことを考えていたとは、つゆ知らず」

「――どうしてこうなっちゃったんだ?」

「どうしてだろうな」

「そこんところが首謀者たるわたしにも良く分からん訳でして。強いて言うなれば――悲願をかなえるためにも、それ以上に無茶なことやってみたかった、とでもいいますか」

「龍の矜持を抱えてるんじゃなかったのかよ!」

「おやほら、さっき追放令くらっちゃいましたしね。龍の支援は受けられませんし、もう後戻り出来ませんわ。此処からは個人プレイということで」

「やるしかない、な」

「俺は何でもいいぞ。頭数が少ない方が沢山楽しみが増える。
……ところで、貴様らが派手に前線をぶっ壊してくれたわけで此方側はあらかた片付いたんだが。今塔の方で、魔女が戦闘しているという通信が入った」

駄弁りながらも、各々の担当区画をこなした上でも、さすがに総司令は絶え間なく指示を出していたようだ。
二人と喋りながらも数十数百の情報を受け取りながら処理し、的確に指揮をする脅威の司令官はぼつりと呟いた。

「交戦相手は"フランケンシュタイン"。状況は芳しくない――だそうだ」

「!」

「遂に本腰を上げましたね、あのイカレ学者め」

「早く援護に回らなくっちゃ。カーラが!」

「そう急くなエピタフィオン。魔女にはもしもの時のために制約解除を言い渡してある。あいつなら何とかするだろう。
――それに、こっちはこっちで相手をしなくちゃならない先客がいるようだ」

言葉とほぼ同じくして、空が黒を帯びて包囲式魔法陣が周囲に展開され龍の咆哮が響いた。鼻を突く強烈な腐敗臭、ドラゴン・ゾンビに違いなかった。
腐り落ちた肉片が砂を焼き、蒸発させながら這いずってくる。数が多い。八騎はいるだろうか。塔にぶつけられてはひとたまりもない物量だ。余りの巨躯が視界を覆うように黒い影が差した。

「ちっ、こんなときに!」 ロゼッタは背中から狙撃銃を引き出し、破魔の弾を込めつつ帯電を開始する。

「人の骨躯を贄にし、龍の屍に魂を降ろす――設置された術式を巧妙に隠蔽し、其処で人魔を戦わせて血を流させる。最期は屍龍で全てを真っさらに。
わたしたちは、まんまと術式のど真ん中におびき寄せられたというわけですね。それにしても、くそっ。なんて惨いことを……」 リーゼロッテが悔しさに顔をしかめた。龍としての彼女の矜持は何処までも凌辱されたままだ。全てを灰にしてやるとばかりに、鬼のような形相を暗に浮かべている。

「リーゼロッテ、戦えるか」

「舐めないでください。彼らは――わたしの手で引導を渡してやります。それがせめてもの供養です……店長、ロゼッタさん、下がっていてください。此処は、わたしが」

「貴様なら、そういうだろうな。 ……エピタフィオン、右翼手に展開しろ。真正面は守るな。俺が成仏させてやる」

「店長!」 リーゼロッテが叫んだ。死神店長はあくまでやる気のようだ。その双眸に、かつてない程に鋭い覇気が宿っている。出撃時の比では無い。強烈な魔力密度に周囲の空気が干渉し悲鳴を上げていた。空間が唸りを上げて、此処に超常を宿していることを黙示している。

「貴様、全てを抱え込む積りか? そんなことは許さん。貴様は俺の部下だ」

「――退けと言っているんですよ。それとも、言葉では分かりませんか」

口から煉獄が溢れ出ている。決して脅しでは無い、純粋な殺意だ。だが死神店長はあろうことか、ぽんと撫でるように頭の上に手を置いた。
元より二、三つ回りも違う身長差だ。いつも以上に店長が大きく見えた。リーゼロッテは、不意の出来事にきょとんとして、一瞬殺意を忘れてしまっていた。

「いいか、よく聞け。あの屍は無限再生を施されている。俺の術式ならば、損傷をものともしないあの捨て身から魂魄呪縛詛だけをひきはがせる。
何も悪戯に傷つけ、灰にし、消失させなくとも彼らは救える。 ……貴様こそ、本職の"死神"を舐めるなよ。それならば、いいだろう?」

「……店長」

「左翼手前方につけリーゼロッテ。少しの間さえ抑えてくれれば、文字通りにまとめて昇天させてやろうぞ」

「全く……ミスったら承知しませんよ、店長!」 先程ロゼッタが言い放った言葉を、そのまま転用して彼女は背中を預けた。横顔は、「龍神」ニーズヘッグから死神店長の部下、「死神」のリーゼロッテへと剣呑さをしまいこんだそれへと移り変わった。

「店長さん、割と付き合いいいんだね」

「ふん。世話の焼ける部下だ。毒を食らわば皿までとも言う」

「あんな色々スケールのおかしい女の子他に居ないからさ。彼女を御せるのって結局同じスケールの店長さんだけじゃない」

「何が言いたい小娘」

「お似合いだよ」

「あぁ!?」

余程狼狽したのか、術式が途中で停止してしまうほどに裏返った声を上げ、そしてむせた。
してやったりとばかりにロゼッタは指を向けてけらけらと笑い飛ばす。死神を出しぬけるなんて機会はそうそう訪れもしないだろう。たまにくらいいいものだ。
笑い飛ばされた店長の目はこれ以上に無いくらい伏して、今にも呪い殺してやると言いたそうだ。照れ隠しなのかそれとも本気なのか、どちらか分からぬところがまたとても彼らしい。

「――エピタフィオン、貴様俺を侮辱する積りか?」

「んーな大それたこと考えちゃいないって。それよりあたしみたいな小娘の言うことなんかいちいち真に受けてると命幾つあっても足りないよ? し・に・が・みさん」


悪戯そうにそう流し、拳に点した雷光に軽く接吻をした。迸る稲光は膨れ上がって全身を覆い、ロゼッタは動く屍と化した龍へと向き直った。
先程まで塔に向かっていた連中とは比にならない重圧は、龍の魂が度重なる悪質な術式によって腐敗した肉体に縛りつけられていることを意味する。何度崩しても消滅せず、焼き切れず、既に事切れているからもう事切れない。永劫の無限地獄。その呪縛から解き放ってやらねばならない。

「では、気を取り直して向き直るとするか」

砂が、逆立った。まるで現れた脅威に靡くように。
全くこの男は――今まで何処にそれほどの力を忍ばせていたのだろうか。本当の強者は力の片鱗を一切も感じさせない、それが真に実感となって、砂原を包み隠した。
深くおぞましく、何処までも重く圧し掛かる空気を貫いて、姿を現したのは。
この世の何もかもを弾き返さんと煌煌と輝く、六振りの天使の翼だった。憎悪の果てに見る、パンドラの箱だった。トランプと同じく、ジョーカーは、この世界に二枚あったのだ。

そして、高らかな宣戦布告。

「……この魔界で、己が血を、世界を、そして諸君自身それぞれが守りたいものを懸けて戦う全軍悪魔共に告ぐ!」


この世界に在るもの、有象無象の脳裏の真髄まで沁み込む強烈な思念波が魔界「バベル」に駆ける。
まるで魔界全土が静寂し、彼の言葉に傾注したようだった。空が彼の一言で全て覆われた。まさしく、何の比喩でもなく。彼は――如何に店長などとなじられようと、この世界の主なのだ。
聴こえたようだな、満足そうにそう俯き彼は続ける。

「我々は、誇り高き悪魔であり、闇の眷族であり、奴らがその名を聞けば震え慄いて日の元に逃げ込む化け物である。
それは我らの肉体が打ち砕かれようと、魂が死せようと、何度我らが生まれ出でた地が蹂躙されようと、
決して滅ぶことは無い。
故に安堵せよ、そして邁進せよ。絶対なる恐怖を忘れた人共に再び、眼を抉じ開け我らが真の姿をその双眸に刻み込んで思い知らせようでは無いか」

影が差した。
ロゼッタは気付いた。月が……動いている。
真昼間に見えるはずの無い月が、ゆっくりと陽光の前に躍り出、その光を遮断して魔界を暗黒で包み込んでいく。日蝕が起きているのだ。
そして、更なる事実に気付く。死神店長の名は、ザラキエル。七大天使、アークエンジェルがひとりサリエルの別名。
サリエルとは死を司る天使であり、神々に殺生を許された搾取者。さらには月の満ち欠けを操作するただ一人の存在。

そう、彼の手に掛かれば、昼も夜もない。これならば、成程魔物も全力を出せよう。夜の魔物共は不死身に等しく、肉体の再生速度は陽光の出ている刻の比では無い。
吸血鬼は堂々と屋敷の外を闊歩し、人狼は狂戦士の如く戦い続けられるからだ。世界が闇に包まれれば、此処からは彼ら悪魔の独壇場に違いなかった。


「舞台は用意した。これで諸君らを縛る忌々しい光はもうない。制約を解除し、好きに殺し好きに貪り好きに戦い屍で山を築け。それでこそ悪魔だ。それが我々の生き様。“月”は我らに微笑んだ。往くぞ皆の者。各自存分に欲望の赴くままに戦うがいい」



天体法則すらも螺子曲げて世界に闇を齎した主は、誇らしげに声を澄ませる。
ただ一人神に敵対したその神聖な存在は神が最も手放してはいけない創造物だったことを、月は空を嘲笑うかの如く煌めいている。太陽をその背に纏って、暗黙の淵にダイアモンドリングを輝かせ。
光の当たらなくなった塔からは、怒涛の蠢きが地を覆った。歓喜に打ち震え、形勢を物ともせずに逆転劇を演じる悪魔たちの群れが鬨を上げる。
人が技術の粋を尽くして魔に抗うというなら、自分たちは再び全霊を尽くしてそれに応え、容赦なく叩き潰してやるという、果てなき傲慢の形、彼ら本来の姿。
最早戦の行く末は――彼らの掌だった。
喜び暴れる彼らに、まだ演説の途中であった死神店長は呆れ――憤慨し――やるせなくなって、付け足す様にまくしたてて叫ぶ。


「最期に私から言い渡す指示はただ一つ、至極単純なものだ。
いいか、好き勝手やるのは構わんがこういう大事な時くらいはその尖がった耳をかっぽじって、
一回しか言わんからよく聞いておけよ天の邪鬼共!」
 
 
「全軍徹底抗戦あるのみ――以上だ!」




To be continued [file#12]
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  1. 2011/05/30(月) 01:28:55|
  2. 一次創作
  3. | トラックバック:0
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